第2章 『没頭』 第50話

テル「なんでやね〜〜〜〜ん!!!」


これ以外の言葉が思いつかなかった。


好きで好きでたまらない相手であり、しかも喧嘩したわけでもない。
これ以上無い信用を置いていた相手から突然の別れを告げられたのだ。
現実を受け入れられる訳も無かった。



テル「なんでやねん!!!」


 


テル「なんでや…」


 


テル「なんで…」


 


 


少しずつ現実を理解し始めた自分がいた。



ヤス「テル!カラオケでも行くか」



どんよりした空気を払拭するかのように、ヤスが急に言った。
なんでこんな時に?と思いながらも、この状態で歌ったらどうなるのか考えてみた。



テル「あかん。こんな時に歌なんか歌ったら大変な事になるって…」


ヤス「ええから行くぞ!」



不器用なヤスの精一杯の慰めだったのだろう。
カラオケを断ったからといって全く何をする気力もない。


乗り気ではないテルを無理矢理原チャの後ろに乗せ、早々に六甲を下った。



ヤスは無言で目的のカラオケに向かっている。


テルは原チャの後ろでひたすら街中を眺めていた。


今まで味わった事がない「無」の状態だった。
見ているようで見ていない、焦点が合っていないと言った方が分かりやすいだろうか。


自分でも感情の起伏が異常に激しい事が分かった。



テル「なんでやね〜ん!!!」



何度も急に叫んだ。


ヤスは敢えて反応せず、ノンストップで突っ走った。



ヤス「着いたで」


テル「おぅ」



淡々とヤスは手続きを済ませ、二人では十分すぎるほどの部屋に入った。



ヤス「テル、とりあえず1曲歌っとけや」


テル「おお。でも何歌うか迷うやん」


ヤス「直感や」



当時、まだ歌った事は無いがとても悲しい歌だと感じていたGLAYの
Togetherという歌をなぜか選曲した。


テル「なんでか分からんけどこれ歌うわ」


ヤス「直感は大事や」


テル「でもこれって失恋ソングやねんよなぁ」


ヤス「ビンゴやんけ」


テル「いや、泣いてまうかも」


ヤス「今更かっこつけんでも十分かっこ悪いから大丈夫じゃ」



そうこう言っているうちにイントロが流れ始める。
この曲は歌詞が始まるまでピアノのイントロが結構長く続く。


いつもちゃんと聞いた事は無かったが、ピアノの音が異常に胸に響く…。
イントロの間に今まで真美ちゃんと過ごした日々を走馬灯のように思いだす。



「I hear the …」



( ┰_┰)



歌い始めてすぐ、涙で声が出なくなった。


第2章 『没頭』 第49話

ヤス「このアホたれがぁ!」


テル「おおヤスやんか!あれ?さっきまで電話でしゃべってたよなぁ」


ヤス「お前もうあかんわ。ええからケツに乗れ!!!」



ヤスは強引にテルの服を引っ張り、原チャの後ろに座らせた。



テル「ヤス〜、どこ行くん?」


ヤス「六甲じゃ」


テル「おおお!めっちゃ楽しいなぁ♪」



今思えば、あの時の精神状態は泥酔状態と同じだったように思う。


とにかく別れたという事実を考えたくないため、頭が自らの意思で酔ったような感覚に陥らせたのだろう。
もしはっきりとした意識があったとすると、本当にどうなっていたか分からない。



一人で乗っていてもあまり速度が出ない、きつい上り坂を二人乗りで上がっていく。



テル「ヤス〜、めっちゃ遅いなぁ」


ヤス「さすがに六甲を二ケツで上がるんはきっついか…」


テル「でも気合やろ!?」


ヤス「当たり前やんけ」



展望台に近付くに伴い、どんどん空気が冷えてくる。



テル「めっちゃ空気が気持ちええわぁ」


ヤス「おっさん、どうでもええけど落ちるなよ」


テル「おおお!六甲最高やぁ〜」



展望台に付くなり、ヤスは神戸を見下ろせる場所へテルを強引に連れて行った。



ヤス「おやじ〜、すまぁん!!!」



いきなりヤスが大声で叫んだ。



テル「なんで親父さんに謝ったん?」


ヤス「そんなん俺がこんな感じやからに決まってるやんけ」


テル「へぇ〜。ヤスにもそういう気持ちがあるんやなぁ」


ヤス「あるっちゅうねん。はよお前も叫ばんかい」


テル「俺も叫ぶん?」


ヤス「当たり前やんけ。何の為にここに連れてきたと思ってんねん」


テル「はあ〜?本気でゆってんの???」


ヤス「ええからはよ叫べって」



何を叫んだらいいんだろう。
別にまだ親父に謝るような気持ちは無いし、かといって大声で叫ぼうと思うような言葉は何も思いつかない。


いや…ある。


正直な自分の気持ちはこれしかない。



テル「なんでやね〜〜〜〜ん!!!」


第2章 『没頭』 第48話

テル「ヤス〜!さっきなぁ、真美ちゃんと別れたでぇ〜(笑)」


ヤス「はっ!? っていうかお前酔ってる? 取りあえず大丈夫か?」


テル「何がぁ?めっちゃ元気に決まってるやん」


ヤス「あかんわ…。お前今どこにおんねん!!!」


テル「今かぁ?今はなぁ、う〜ん…。真美ちゃんの家の近くやなぁ」


ヤス「お前そっからもう動くな!すぐに迎えに行くから待っとけよ!」



動かずに待っている訳が無い。
何と言っても我を完全に見失っているのである。



心臓の鼓動が大音量で聞こえる。



頭の中が今という時間を全く認知できていない。



どこを目指す訳でもなく、とにかく歩く。



歩く。



目の前の障害物は全て蹴り飛ばす。



歩く。



三宮付近まで来た時、ヤスからの電話が鳴った。



ヤス「お〜い、今どのへんにおるんや?」


原チャに乗りながら電話しているのだろう、風の音で声が遠い。


テル「おおヤスか。どないしたん?」


ヤス「お前ほんまにあかん。ええから今どこにおんねん!」


テル「AMPMがあるなぁ」


ヤス「めっちゃ三宮やんけ!どこまで歩いてんねん」


テル「そうなん?なんでこんな所におるんやろ…。はっはっは!!!」


ヤス「本間たのむでぇ。俺も暇とちゃうねんからさぁ」


テル「本間すんまへんなぁ。何か頭がおかしいみたいでなぁ」



ツーツーツー。



急に電話が切れたその瞬間、ヤスが目の前に登場した。



ヤス「このアホたれがぁ!」


第2章 『没頭』 第47話

 真美「テル君ごめんね!」


テル「えっ???」



そこから先の言葉は聞きたくなかった。
まだごめんねという言葉を聞いただけだったが、一瞬にしてテルは悟ったのだ。


 


 


ゴクリ。。。


 


 


真美「別れよ」


 


 


その瞬間、テルは目の前が真っ白になった。


人間、ショックが大きいと目の前が真っ白になるなんて表現を耳にした事があるが、実際にそうなってみると頭の中は「無」になってしまうようだ。


 


テル「えっ?」


 


真美「だから…。別れよって言ったの」


テル「何で?とりあえず全然意味が分からへんねんけど…」


真美「私だってすんごい悩んだ結果なんだよ」


テル「悩んだ結果って…。他に好きな人でもできたん?」


真美「それは絶対に無いけど、色々あってね…」


テル「ごめん、ちょっと待ってくれ。パニックやわ」


真美「…。」

真美「私よりテル君にピッタリな人、きっと見つかるから♪」


 


とにかく頭の中を整理しようと思ったが、とても整理なんてできない。


とりあえず把握できたのは、真美ちゃんが別れたいと思っている事だけだ。
いや、大好きな真美ちゃんを失ってしまうかもしれないという全く考えた事もない恐怖心が心の底から湧き出してきている事だけと言った方が正しいかもしれない。


 


真美ちゃんと別れる?


 


そんな事あるわけない。


 


それから30分ほど経ったのだろうか、本当にパニック状態だった事もあって詳細な会話の内容を全く覚えていない。


私の記憶は放心状態で真美ちゃんと一緒に部屋を出る時から再開する。



いつも登っていた部屋への階段を下りながら、ふとつぶやいた。



テル「もうこの階段を下りる事も、ましてや上ることは無いんやな…」


真美「…。」



玄関を出て家の向かいにあった駐車場で缶コーヒーを買い、その場に力無く座り込んだ。
ポタポタと涙がこぼれていた。


ふと見ると、真美ちゃんはバッグを持っている。



真美「ごめん、これから友達と遊びに行く約束してるんよ」


テル「お?そっかそっか、じゃあこんな所で時間潰してたら迷惑やな」


真美「うん、ごめんな」


テル「じゃあまたな!」



気丈に振舞ってみたが、とにかく別れ話をした後に平気で遊びに行けるという気持ちが全く理解できなかった。


真美ちゃんを見送ったその時、あまりにも信じられない事が起こりすぎたのだろう。
パニック状態を超えて笑いがこみ上げてきたのだ。



テル「ハッハッハ…」



取りあえずこの場から立ち去ろうと思い、当ても無く歩き始めた。
まるで酔っ払いかのように千鳥足でフラフラと歩いているのが分かる。


目の前にあったパイロン(三角コーン)を思い切り蹴る。



テル「ふふふ。めっちゃ飛んだなぁお前。もう一回蹴ったるわぁ」



完全に酔っ払っているような気分だ。
ふと、さっきまで一緒にいたヤスを思い出して電話を掛けてみる。



テル「ヤス〜!さっきなぁ、真美ちゃんと別れたでぇ〜(笑)」


ヤス「はっ!? っていうかお前酔ってる? 取りあえず大丈夫か?」


テル「何がぁ?めっちゃ元気に決まってるやん」


ヤス「あかんわ…。お前今どこにおんねん!!!」


テル「今かぁ?今はなぁ、う〜ん…。真美ちゃんの家の近くやなぁ」


ヤス「お前そっからもう動くな!すぐに迎えに行くから待っとけよ!」


第2章 『没頭』 第46話

 テル「そろそろ真美ちゃんの家に行ってくるわ」


ヤス「おお。まぁ仲良くラブラブしてきてくれや」


テル「言われんでもそうするわ」



ヤスとの時間が楽しかった為、真美ちゃんに対する色々な不安が無くなっていた。
つまり、単純に真美ちゃんと楽しい時間を過ごしに行くんだという思いに変わってしまっていたのだ。


ウキウキしながら原チャを走らせ、10分ほどで真美ちゃんの家に到着した。



テル「もしもし?今家の前に着いたで〜」


真美「じゃあ中に入ってきていいよ」



どことなくよそよそしい雰囲気も感じたが、細かい事は気にせず中に入る。


いつもの真美ちゃんの部屋の匂いだ。
でも部屋の中のレイアウトが少し変わっている事に気が付いた。



テル「そういえば部屋の雰囲気が変わっていい感じやん」



と言いながら、机に目をやるとプリクラがあった。
そこには男女が寄り添いながらピースをしている姿が写っており、女の子は真美ちゃんだった。


テルはこのプリクラを一緒に撮った覚えが無かったため、ふと隣の男の顔を見る。



「真美ちゃんの元彼氏だ!!!」



実は真美ちゃんと付き合って間もない頃、この元彼氏とバイト先で揉めた事があって個人的に最も嫌いな人間なのだ。


コンビニにお弁当などを配達しにくる仕事をしていた元彼氏と事務所でバッタリと会った事があり、真美ちゃんとテルが付き合っている事を知っていたので意味も無くキレてきて口喧嘩をしたことがあるのだ。



「それにしてもこのプリクラって最近撮ったやつやんな…」



明らかに動揺したテルの顔におかしいと思い、真美ちゃんはプリクラが机に置いたままだった事に気が付いて何も無かったかのようにプリクラを引き出しにしまった。


それと同時だった。



真美「テル君ごめんね!」


テル「えっ???」



そこから先の言葉は聞きたくなかった。
まだごめんねという言葉を聞いただけだったが、一瞬にしてテルは悟ったのだ。


 


 


ゴクリ。。。


 


 


真美「別れよ」


第2章 『没頭』 第45話

 シフトの交代時間は17時。
そして今は16時半なのでもうすぐ真美ちゃんが来るだろう。


「いらっしゃいませ〜」


心ここにあらずといった面持ちで時間が過ぎるのを待ちに待った。


 


30分が長い…。


 


ふと外に目をやると



「来たっ!!!」



真美ちゃんがついに来た。



真美「おはようございま〜す」


テル「おっす」



取り合えず店に客はほとんどいないから、今のうちに話しをするために控え室へと足早に向かった。



真美「あれ!?どうしたん???」


テル「いや、今日の夜って空いてないかな〜って思って」


真美「ちょうどいいわ、私もちょっと話しがあったからさぁ」


テル「あっそうなん!?じゃあ10時くらいに迎えに来たらええか?」


真美「ううん、家に10時半くらいに来てくれたらいいや」


テル「分かった。じゃあそれくらいに行くわ」



真美ちゃんから話しがあるって珍しいなぁと違和感を感じながらも、すんなりと会う約束ができた事に満足していた。


取り合えず昨日のモヤモヤは消えそうやし、これで気兼ねなく追悼暴走に参加できそうやん♪とニコニコのままバイトを終えた。


10時までの5時間、特にする事もないのでヤスに連絡してみる。



テル「今って何してるん?」


ヤス「おお?今は駐車場でZRちゃんいじってるで」


テル「分かった。じゃあ今から行くわ〜」


ヤス「おお。そういえばジョーカフェ買ってきて」


テル「あいよ」



ジョーカフェとはジョージアのカフェオレの事で、二人の間では欠かす事のできない重要な飲み物だ。
お互い頼みごとがあったらどんな面倒な事でもこのジョーカフェで都合をつけるというくらいの存在であった。



自販機でジョーカフェを2本買い、三宮のヤスの家まで向かう。


駐車場に入ると、ヤスがZRの外装を外して何やらセカセカと作業をしている。



テル「はいジョーカフェ」


ヤス「待ってました!やっぱこれが無いと生きていけへんわぁ」


テル「また大げさやなぁ。でも本間に癖になるなぁこれ」


ヤス「あったり前やん。俺はこれ1本で何でもすんで」


テル「って事は、その1本で貸し1個ってか」


ヤス「おお。そういう事にしといたるわ」


テル「えらい素直やん」


ヤス「そりゃジョーカフェもらった分はお返ししまっせ」


テル「よっしゃ、覚えとこ」



相変わらずくだらない冗談を交わしながら原チャを前に時間を潰す。
青春時代にしか味わえない貴重な時間ではあるが、当時はそれほど貴重な時間だという認識なんてあるはずもない。


ただグダグダと過ごしている時間が今になって思えば本当に羨ましい(笑)


そうこうしているうちに10時近くになる。



テル「そろそろ真美ちゃんの家に行ってくるわ」


ヤス「おお。まぁ仲良くラブラブしてきてくれや」


テル「言われんでもそうするわ」


第2章 『没頭』 第44話

昨夜のモヤモヤが頭から離れないまま、久しぶりにコンビニのバイトに入っている。


今まで真美ちゃんが何かを濁したような答え方をする事は無かったのに、どうして昨日に限ってはあのような態度だったのだろう…。


確かに最近は原チャばかりで全然遊びにも行けてないし、彼氏として成り立っているかを問われるときっとNGだろう。


かと言ってそれで喧嘩をした事もないし、元々お互いを束縛しすぎないようにしているのでそれが直接的な原因とは思えない。いや、思いたくない。


そんな事を延々と頭で回想しながらバイトのシフト交代の時間が近づく。


テル「そういえば今日は次に誰が入るんやったかな?」


店の事務所に行き、シフト表を確認してみる。



!?



真美ちゃんだ!!!



読者の方々はすでにお忘れかもしれないが、真美ちゃんは当時のバイト先で知り合い、お互い彼氏彼女がいる状態から色々と進展があっての今に至っているのだ。
参考までに⇒『第1章 出会い 第4話』

つまり同じ時間にシフト入りする事もあれば、今日のように交代する事もある。


「昨日のモヤモヤを確認する絶好の機会や!!!」


と心で叫び、とにかく今日の夜に会えないか聞いてみよう。


これできっとモヤモヤも消えて気持ちをスッキリさせた状態で追悼暴走に臨めるだろう。



という安易な気持ちでいたテルを激変させる大事件のきっかけがこの日の夜に起こる事を本人はまだ知らない…。


第2章 『没頭』 第43話

 ミッション車に乗るという貴重な経験を終え、興奮気味に帰宅した。
この興奮を真美ちゃんに伝えたいと思い、衝動的に電話をしてみる。



…。



出ない。



いつも電話に出るのに少し変だと思ったが、寝ているのだろうと得意のプラス
思考でそのまま家に帰った。


しかし何か気になるので、家に付いてからもう一度電話してみる。



…。



いつもは寝ていても電話に出るのだが、熟睡しているのだろうか。


まさかこんな時間に遊びに行っているとも考えられないし、もしそうだとしたら
何か連絡があってもおかしくない。


色々と変な想像が頭をよぎり、寝るに寝られない。



テル「あかん、家に行ってみよ」



部屋の窓から家を抜け出し、原チャのエンジンをかけずに坂を下って音が聞こえない
所まできてからエンジンをかける。夜中に家を抜け出す時の基本だ。


運転中も幾度と無く電話を掛けるが、やはり電話には出ない。


必要以上の不安が頭をよぎる。。。


幸いな事に家から原チャで5分もかからない所なので、色々と妄想している間に
真美ちゃんの家に着いた。


部屋の電気は…。



暗い。



テル「やっぱり寝てるんやな」



ここまでくると、そう思い込むしかない。
肝心の電話には出ないし、勝手に家に入る事もできない。
ここはひとまず家に帰るとしよう。


と思ったその時!


向こうから眠そうな顔をした真美ちゃんが歩いてきたのだ。



テル「あれ〜!?こんな時間まで何しとったん???」


真美「いやいや、逆になんでこんな所におるん!?」


テル「何回電話しても出えへんから心配になって来たんや」


真美「あ〜。カヨの家で寝とった」


テル「寝とったって…。めっちゃ心配したやんけ」


真美「そうなん?」


テル「そうなんって…そら心配もするって」


真美「もう眠いから帰って寝る」


テル「お、おう。じゃあ俺も帰るわ」


何か煮えきれない気持ちだったが、取りあえず無事だった事が確認できただけ
でも良しとするか。



それにしてもいつもの真美ちゃんとは少し違った雰囲気に感じた。


この時の嫌な予感はもうすぐ的中する事になる。


第2章 『没頭』 第42話

大樹「おお、やっと帰ってきたわ」

ヤス「あっ!あのボケ何やっとったんじゃ」


視界にヤスの大樹が入り、向こうもこちらに気が付いた事が分かった。
特にヤスに関しては道路にまで出てきてこっちを見ている…。



あれは完全にキレてるな…。


そうこうしているうちに、ようやく到着した。という間もなく

ヤス「こらアホ!何しとったんじゃボケ!!!」

テル「いや、俺もこんなに時間取られるとは思わんかったんやって」

大樹「何かあったんけ?」

テル「この先の交差点の所でポリに止められてさぁ、色々調べられたんやわ」

ヤス「うわ、だっさいなぁ (≧m≦)」

テル「笑い事ちゃうわ。本間にしょうもない事で足止めしやがって」

ヤス「で、肝心の6速で坂は登れたんか?」

テル「無理やった(笑)しかもエンストしてエンジン掛からへんし」

大樹「かぶったんやな。変なエンストの仕方したらプラグがかぶるからな」

テル「それで惰性で坂下ってたらポリに止められたんやわ」

ヤス「どっちにしてもダサい事は間違いないな」

テル「いやいや、結構焦ったんやで」

ヤス「で、これでクラッチは完璧なんやろ?」

テル「完璧なわけ無いやんけ。やっと普通に走れるくらいになったくらいやわ」


そうだ、色々とトラブルがあって忘れていたが、本来は週末にあるマサヤ君の追悼暴走で運転するかどうかが掛かっていたのだ。
とは言っても、こんな状態で単車を運転したら間違いなく捕まるだろう。



テル「発進できてもポリから逃げるなんか絶対に無理やで」

ヤス「って事は、一緒に乗ってる俺も捕まるなぁ…」

テル「やろ!?だから今回はパスや」

ヤス「超下手くそが追悼に参加するっていうのも面白いと思ったけど、流石にあかんか」

テル「当たり前じゃ!」

ヤス「まぁええわ、たまには大樹にこれ借りて練習やな」

大樹「家も近いねんからいつでも貸すで。たまに親父も乗ってるくらいやし」


どんな親父だよ…。

第2章 『没頭』 第41話

少し顔が引きつった状態になってきた所で、警官の調査が終わったようだ。


警官「え〜っとねぇ…」


あれ???


悪い予感が的中!?



警官「うん、特に今のところは盗難届けが出てないみたいやなぁ」


ε=( ̄。 ̄;A フゥ…。とりあえず助かったからちょっと反抗しとくか(笑)


テル「今のところはってまだ疑ってんの!?」

警官「そりゃあ信用したいけど、信用して犯人に逃げられると困るからな」

テル「だから、持ち主はこの道の先におるってば!!!」

警官「はいはい。とりあえず免許番号も控えてるから逃げられへんぞ」

テル「本間にうっとうしいなぁ。逃げも隠れもせ〜へんわ!!!」


少し反抗するつもりが、逆に感情を逆撫でされたみたいでむかつく。
本当に頭が固いポリは嫌いだ。



テル「じゃあもう行くで」

警官「ほな気をつけてな」


何が気をつけてじゃボケ。


駄目元でキックを蹴ってみると普通にエンジンが始動した。
しかしここは平常心を保ち、慎重にクラッチをつないで発進する。
ここでエンストしたら恥ずかしい所の話しじゃない。


今思えば、ガソリンで湿っていたプラグが時間と共に乾いて火花が正常に飛ぶようになったのだろう。


テル「こんだけ遅なったらあいつら怒るやろなぁ…」


1分も経たないうちに大樹とヤスが視界に入った。


大樹「おお、やっと帰ってきたわ」

ヤス「あっ!あのボケ何やっとったんじゃ」


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