第3章 『暴走』 第3話

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タケシ「それやったら原チャ確定やな。」

テル「なんかむかつく…」

馬鹿にしているような二人の忠告だが、本当に正解だった。


タケシ「そういえばテルの原チャってそこそこいじってんの?」

テル「そうやなぁ、ZRほど早くはないけど」

ヤス「まだまだやわ。俺のZRで出るか?」

テル「それはどっちでもええんやけど」

タケシ「ポリ撒く時に、結構飛ばすタイミングあるから速い方がええで」

テル「70km/hくらいやったらきつい?」

タケシ「ギリギリかもしれんなぁ」

ヤス「じゃあZRで決定〜」


自分の原チャが遅いというレッテルを貼られたような気もしたが、事実は事実
という事でしぶしぶ了解をした。


テル「でも追いかけられたら小道に入って撒くんやろ?」

タケシ「原チャだけやったらそれでええねんけど、単車がメインやからな」

ヤス「何十台もの単車で小道に入ったら、絶対誰かこけるで」

テル「だから全開で撒くって事か?」

タケシ「ケツ持ちが時間稼ぎしてる間に全開で開いて、撒き道に入るねん」

テル「撒き道?」

ヤス「大体、ルートの中で絶対に撒ける道があるんやわ」

タケシ「とりあえず、遅れんように付いていけば大丈夫や」

テル「じゃあZRで(笑)」

ヤス「おっ、本間にそれでええんかぁ!?」

テル「次までにいじって速くするし」

タケシ「まぁ取り敢えずは様子見やな」

ヤス「そうそう。取り敢えずタオルだけ持って集合って事や」

テル「おおお。顔に巻くやつやな」

タケシ「別にタオルじゃなくてもええねんけどな(笑)」


くだらない事を話しているだけで2時間ほど経っただろうか。
この世界の人間と話している間は振られたばかりだという事をすっかり忘れていた。


テル「そういえば俺ってさっき振られたばっかやんなぁ…」

ヤス「なんや、忘れとったんかい」

テル「おお」


三宮へと折り返している最中の会話である。


ヤス「本間に人騒がせなやっちゃなぁ」

テル「あほか。ちょっと忘れとっただけで、かなり凹んでるわ」

ヤス「お前、本間に好きやったもんなぁ」

テル「こんな事になるなんか本気で思ってなかったからなぁ…」

ヤス「大丈夫やって。女なんかなんぼでもおるわ」

テル「そんなん分かってるわ。でもあいつじゃないとあかんねんって」

ヤス「あかんっ!!!」

テル「えっ?」


後ろを振り向くと、猛スピードでクラクションを鳴らしながらこっちへ
黒光りした車が近付いてくる…。


ヤス「狩りや!絶対落ちんなよ!!!」


第3章 『暴走』 第2話

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単車の排ガスの臭いが妙に心地よい。

二人の乗った単車は爆音を撒き散らしながら、ヨンサンへと吸い込まれていった。

ヨンサンの頭上には阪神高速が通っている関係で、音の反響が凄い。
エンジンを吹かすと町中に響き渡っているかのような大音響が響き渡り、これぞ
醍醐味!という快感を得る事ができる。

そのせいもあってか、ヤスが延々と吹かし続けている。
3車線の道路だが車はほとんどおらず、自由を感じる瞬間だった。

ヤス「そういえば住吉に行った事あったっけ?」

テル「何かあるん?」

ヤス「このへんやったら結構大きい族があるわ。たぶん公園におるんちゃうか?」

テル「へ〜。行った事無いなぁ」

ヤス「ほな近いし、ちょっと顔出してみよか」


大きい族。
見かけた事はあっても、その輪の中に入っていくのは想像したことがなかった。

ちょっと前の自分なら恐さを感じていたはずだが、この日のテルには何の感情も
芽生えなかった。

いや、正確には状況は違っても自分と同じような感情を持った仲間がいるんだろう
というちょっとした安堵感のような感覚だったのかもしれない。

ヨンサンから住宅街へ入っていき、細い道を行くと公園があった。
暗くてよく見えないが、遠めに見ても中に単車が5台は止まっている。

こっちの単車の音に気づき、全員が立ち上がってこちらを警戒しているようだ。

エンジンを止め、惰性で公園内へ入っていく。


ヤス「まいど〜」

???「真島か?」

ヤス「おう。久しぶりやのぉタケシ」

タケシ「相変わらずやなぁ。あれ?ケツに乗ってるのって…」

ヤス「わしの連れ、テルや」

テル「あれ〜?」

タケシ「やっぱそうやんなぁ!?」


まさかの再会であった。

テルが実家の近くで子供の頃よく遊んでいた友達、タケシが目の前にいるのだ。
記憶は定かではないが、タケシはいつだったか引っ越して依頼会っていなかった。

タケシ「テルちゃ〜ん、悪い事ばっかやっとったらあかんで〜」

テル「よう言うわ本間、お前こそ何やってんねん(笑)」

タケシ「俺は誠実な人生をまっとうしてるだけやで」

テル「そんなん俺もやっちゅうねん」

今まで思い出すことがなかった友人との思わぬ再会に、昔の思い出が一気に
湧き出してくる。


ヤス「テルは失恋で人生お先真っ暗やねんな」

タケシ「うわっ。もしかして病んでる人!?」

テル「いらんこと言うなっちゅうねん。別に病んでへんわ!」

タケシ「そういえば明日の追悼出るん?」

ヤス「単車で出ようと思ったけど、テルが慣れてないから原チャで出るわ」

テル「そうなん?」

ヤス「だって、あのクラッチ操作やったら無理やって ( ̄m ̄〃)」

タケシ「なんや、まだ下手っぴかいな」

テル「いやいや、こないだ1回乗っただけやで!?」

タケシ「それやったら原チャ確定やな。」

ヤス「やろ?」

テル「なんかむかつく…」

ヤス「ええやん。取り合えずどういう感じか遠めで見る感じで」


馬鹿にしているような二人の忠告だが、本当に正解だった。


第3章 『暴走』 第1話

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長田まで単車を取りにいき、三宮に帰ってきた時にはすでに街は夜のネオンで
満たされていた。

こういう時に限って、仲良さそうに腕を組み合って歩くカップルが目に付く。

「ちくしょう…」

妬み。

幸せそうな時間をぶっ潰してやろうという気持ちが沸々とわいてくる。


ヴァンヴァンヴァンヴァヴァヴァ〜バババッヴァヴァ〜バババッヴァ…


「えっ!?」

という表情でカップル達が爆音の発生源を慌てて確認する。

「見たらあかん…」

という雰囲気を出しながら、そそくさと足早に立ち去っていく。


お酒の勢いもあるのだろう。
スーツ姿の兄ちゃん達がニヤニヤしながらこっちを見ている。


ヤス「なんやあいつら」

テル「行こ」


兄ちゃん達の目の前に単車で正面からアクセル全開で向かっていく。
慌てたように道を開けるが、目的は通過ではない。

急ブレーキをかけてタイヤを鳴らしながら目の前で単車を止める。

テル「何や?」

兄ちゃん「いや、何も無いです」

テル「はぁ?」

ヤス「調子のって見とったらあかんぞコラ」

兄ちゃん「すんません…」

テル「何も無いんやったらはよ行けや」


イライラしていた。

心が壊れるとここまで人は変わるのかと自分で不思議だった。


テル「ヤス〜。この辺おもんないからヨンサン(43号線)行こ」


全てが敵に見えた。

明らかに自分の目つきが悪い。
目尻が上がり、狐のような目になっているのが分かる。

何の根拠もないが、全てを壊せる気がしていた。

この姿を真美ちゃんに見られたら、今以上に幻滅されるのは分かっている。
しかしこうなったのは真美のせい、だからよりを戻して元の姿に戻してくれ!
と絶対に叶うはずが無い方法でSOSを出しているのだと自分でも分かる。

テルの世界がたった一日で変わった。

すれ違う車が幻想のように見える。
心ここにあらずという言葉はこういう時に使うのだろう。

単車の排ガスの臭いが妙に心地よい。

二人の乗った単車は爆音を撒き散らしながら、ヨンサンへと吸い込まれていった。


第2章 『没頭』 第52話

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テル「そんなんどうでもええわ。取り合えず単車!」

ヤス「ちょお待って。そういえばあいつのバブを借りてくるか」

テル「おっ♪前にちょっと乗ったHAWK2の事やな!」

ヤス「そうそう。でもあいつ長田やから遠いなぁ…」

テル「そんなん気合いやろ!!!」

ヤス「ほほ〜。言うねぇ」


テルの気持ちとしてはどんな手段を用いてでも単車を手に入れようと思っていたが、
以前にも乗った事があるヤスの後輩の単車を手配する事になった。

後輩としては断りたい気持ちがあっただろうが、こういう世界では先輩の言いつけは
納得していなくても従うような風潮があった。

ヤス「ほな取りに行こか〜」

テル「おっ、さすがやなぁ」

ヤス「当たり前やんけ。無理とか言わさへんし」

テル「何か後輩君に悪い事してもたなぁ…」

ヤス「ええねんええねん、とにかく行くぞ」


早々にカラオケを出た二人は長田まで単車を取りに行く。
外に出た時の肌寒さが瞬時にテルの頭を冷やし、真美ちゃんの事を思い出させようと
容赦なく襲い掛かる。

しかしテルは自分の感情がおかしい事に気が付いた。
思い出しても悲しいと思えなかったのだ。

いや、憎しみの対象として無理に置き換えたのかもしれない。

「こうなったらとことん暴れてやる!」

テルが悪い道に進んでるといった噂を真美ちゃんの耳に届けようとしていたのか、
とにかく良い悪い関係なく自分の存在をアピールする術がそれしか思いつかなかった
だけなのかもしれない。

理由は定かでないが、この日を境にテルは暴走する。


第2章 没頭 完


次号より「新章 暴走」へ突入!


第2章 『没頭』 第51話

 いつもちゃんと聞いた事は無かったが、ピアノの音が異常に胸に響く…。
イントロの間に今まで真美ちゃんと過ごした日々を走馬灯のように思いだす。



「I hear the …」



( ┰_┰)



歌い始めてすぐ、涙で声が出なくなった。



テル「やっぱあかんって…」


ヤス「ええから泣きながら歌わんかい」



「むぅげぇんのぉ〜ごぉのぉうぅじゅ〜うでぇ〜 (/□≦、)」



テル「もうあかん」



リモコンで演奏停止を押す。



…。



ヤス「なんや辛気臭いのぉ!ほんならわしが歌うでぇ」


テル「おぅ」


ヤス「やっぱ男やったら尾崎豊やで!!!」


テル「おぅ」



その後、テルは全く歌うことが出来ずにヤスは延々と歌い続けた。
もちろん自己満足のためではなく、テルを少しでも元気付けようとしていたのだ。


ヤスのそのような姿を見ていて、テルは今の自分が馬鹿らしく思えた。


初めての失恋、しかも突然の事で受け止めるまで時間が掛かった。
しかし事実として受け入れなければ、いつまでもこのままである。


とは言っても、そんなにすぐ立ち直れるようなダメージでは無かったが、まずは嘘を付いてでもヤスを安心させなければいけないと思ったのだ。



テル「ヤス!なんかもう吹っ切れたわ。あ〜、何かあほらしっ!」


ヤス「おお、ほんならもう大丈夫やな」


テル「おお。そういえばどっかに単車ないかのぉ?」


ヤス「単車ぁ?」


テル「こういう時は思いっきり騒ぎたいやん」


ヤス「何や、暴走したいお年頃ですか?」


テル「ぬ〜すんだバイクで走りだし♪ってか (ΦωΦ)」


ヤス「あれは15の夜やんけ。俺らもう17やし」


テル「そんなんどうでもええわ。取り合えず単車!」


ヤス「ちょお待って。そういえばあいつのバブを借りてくるか」


テル「おっ♪前にちょっと乗ったHAWK2の事やな!」


ヤス「そうそう。でもあいつ長田やから遠いなぁ…」


テル「そんなん気合いやろ!!!」


ヤス「ほほ〜。言うねぇ」


第2章 『没頭』 第50話

テル「なんでやね〜〜〜〜ん!!!」


これ以外の言葉が思いつかなかった。


好きで好きでたまらない相手であり、しかも喧嘩したわけでもない。
これ以上無い信用を置いていた相手から突然の別れを告げられたのだ。
現実を受け入れられる訳も無かった。



テル「なんでやねん!!!」


 


テル「なんでや…」


 


テル「なんで…」


 


 


少しずつ現実を理解し始めた自分がいた。



ヤス「テル!カラオケでも行くか」



どんよりした空気を払拭するかのように、ヤスが急に言った。
なんでこんな時に?と思いながらも、この状態で歌ったらどうなるのか考えてみた。



テル「あかん。こんな時に歌なんか歌ったら大変な事になるって…」


ヤス「ええから行くぞ!」



不器用なヤスの精一杯の慰めだったのだろう。
カラオケを断ったからといって全く何をする気力もない。


乗り気ではないテルを無理矢理原チャの後ろに乗せ、早々に六甲を下った。



ヤスは無言で目的のカラオケに向かっている。


テルは原チャの後ろでひたすら街中を眺めていた。


今まで味わった事がない「無」の状態だった。
見ているようで見ていない、焦点が合っていないと言った方が分かりやすいだろうか。


自分でも感情の起伏が異常に激しい事が分かった。



テル「なんでやね〜ん!!!」



何度も急に叫んだ。


ヤスは敢えて反応せず、ノンストップで突っ走った。



ヤス「着いたで」


テル「おぅ」



淡々とヤスは手続きを済ませ、二人では十分すぎるほどの部屋に入った。



ヤス「テル、とりあえず1曲歌っとけや」


テル「おお。でも何歌うか迷うやん」


ヤス「直感や」



当時、まだ歌った事は無いがとても悲しい歌だと感じていたGLAYの
Togetherという歌をなぜか選曲した。


テル「なんでか分からんけどこれ歌うわ」


ヤス「直感は大事や」


テル「でもこれって失恋ソングやねんよなぁ」


ヤス「ビンゴやんけ」


テル「いや、泣いてまうかも」


ヤス「今更かっこつけんでも十分かっこ悪いから大丈夫じゃ」



そうこう言っているうちにイントロが流れ始める。
この曲は歌詞が始まるまでピアノのイントロが結構長く続く。


いつもちゃんと聞いた事は無かったが、ピアノの音が異常に胸に響く…。
イントロの間に今まで真美ちゃんと過ごした日々を走馬灯のように思いだす。



「I hear the …」



( ┰_┰)



歌い始めてすぐ、涙で声が出なくなった。


第2章 『没頭』 第49話

ヤス「このアホたれがぁ!」


テル「おおヤスやんか!あれ?さっきまで電話でしゃべってたよなぁ」


ヤス「お前もうあかんわ。ええからケツに乗れ!!!」



ヤスは強引にテルの服を引っ張り、原チャの後ろに座らせた。



テル「ヤス〜、どこ行くん?」


ヤス「六甲じゃ」


テル「おおお!めっちゃ楽しいなぁ♪」



今思えば、あの時の精神状態は泥酔状態と同じだったように思う。


とにかく別れたという事実を考えたくないため、頭が自らの意思で酔ったような感覚に陥らせたのだろう。
もしはっきりとした意識があったとすると、本当にどうなっていたか分からない。



一人で乗っていてもあまり速度が出ない、きつい上り坂を二人乗りで上がっていく。



テル「ヤス〜、めっちゃ遅いなぁ」


ヤス「さすがに六甲を二ケツで上がるんはきっついか…」


テル「でも気合やろ!?」


ヤス「当たり前やんけ」



展望台に近付くに伴い、どんどん空気が冷えてくる。



テル「めっちゃ空気が気持ちええわぁ」


ヤス「おっさん、どうでもええけど落ちるなよ」


テル「おおお!六甲最高やぁ〜」



展望台に付くなり、ヤスは神戸を見下ろせる場所へテルを強引に連れて行った。



ヤス「おやじ〜、すまぁん!!!」



いきなりヤスが大声で叫んだ。



テル「なんで親父さんに謝ったん?」


ヤス「そんなん俺がこんな感じやからに決まってるやんけ」


テル「へぇ〜。ヤスにもそういう気持ちがあるんやなぁ」


ヤス「あるっちゅうねん。はよお前も叫ばんかい」


テル「俺も叫ぶん?」


ヤス「当たり前やんけ。何の為にここに連れてきたと思ってんねん」


テル「はあ〜?本気でゆってんの???」


ヤス「ええからはよ叫べって」



何を叫んだらいいんだろう。
別にまだ親父に謝るような気持ちは無いし、かといって大声で叫ぼうと思うような言葉は何も思いつかない。


いや…ある。


正直な自分の気持ちはこれしかない。



テル「なんでやね〜〜〜〜ん!!!」


第2章 『没頭』 第48話

テル「ヤス〜!さっきなぁ、真美ちゃんと別れたでぇ〜(笑)」


ヤス「はっ!? っていうかお前酔ってる? 取りあえず大丈夫か?」


テル「何がぁ?めっちゃ元気に決まってるやん」


ヤス「あかんわ…。お前今どこにおんねん!!!」


テル「今かぁ?今はなぁ、う〜ん…。真美ちゃんの家の近くやなぁ」


ヤス「お前そっからもう動くな!すぐに迎えに行くから待っとけよ!」



動かずに待っている訳が無い。
何と言っても我を完全に見失っているのである。



心臓の鼓動が大音量で聞こえる。



頭の中が今という時間を全く認知できていない。



どこを目指す訳でもなく、とにかく歩く。



歩く。



目の前の障害物は全て蹴り飛ばす。



歩く。



三宮付近まで来た時、ヤスからの電話が鳴った。



ヤス「お〜い、今どのへんにおるんや?」


原チャに乗りながら電話しているのだろう、風の音で声が遠い。


テル「おおヤスか。どないしたん?」


ヤス「お前ほんまにあかん。ええから今どこにおんねん!」


テル「AMPMがあるなぁ」


ヤス「めっちゃ三宮やんけ!どこまで歩いてんねん」


テル「そうなん?なんでこんな所におるんやろ…。はっはっは!!!」


ヤス「本間たのむでぇ。俺も暇とちゃうねんからさぁ」


テル「本間すんまへんなぁ。何か頭がおかしいみたいでなぁ」



ツーツーツー。



急に電話が切れたその瞬間、ヤスが目の前に登場した。



ヤス「このアホたれがぁ!」


第2章 『没頭』 第47話

 真美「テル君ごめんね!」


テル「えっ???」



そこから先の言葉は聞きたくなかった。
まだごめんねという言葉を聞いただけだったが、一瞬にしてテルは悟ったのだ。


 


 


ゴクリ。。。


 


 


真美「別れよ」


 


 


その瞬間、テルは目の前が真っ白になった。


人間、ショックが大きいと目の前が真っ白になるなんて表現を耳にした事があるが、実際にそうなってみると頭の中は「無」になってしまうようだ。


 


テル「えっ?」


 


真美「だから…。別れよって言ったの」


テル「何で?とりあえず全然意味が分からへんねんけど…」


真美「私だってすんごい悩んだ結果なんだよ」


テル「悩んだ結果って…。他に好きな人でもできたん?」


真美「それは絶対に無いけど、色々あってね…」


テル「ごめん、ちょっと待ってくれ。パニックやわ」


真美「…。」

真美「私よりテル君にピッタリな人、きっと見つかるから♪」


 


とにかく頭の中を整理しようと思ったが、とても整理なんてできない。


とりあえず把握できたのは、真美ちゃんが別れたいと思っている事だけだ。
いや、大好きな真美ちゃんを失ってしまうかもしれないという全く考えた事もない恐怖心が心の底から湧き出してきている事だけと言った方が正しいかもしれない。


 


真美ちゃんと別れる?


 


そんな事あるわけない。


 


それから30分ほど経ったのだろうか、本当にパニック状態だった事もあって詳細な会話の内容を全く覚えていない。


私の記憶は放心状態で真美ちゃんと一緒に部屋を出る時から再開する。



いつも登っていた部屋への階段を下りながら、ふとつぶやいた。



テル「もうこの階段を下りる事も、ましてや上ることは無いんやな…」


真美「…。」



玄関を出て家の向かいにあった駐車場で缶コーヒーを買い、その場に力無く座り込んだ。
ポタポタと涙がこぼれていた。


ふと見ると、真美ちゃんはバッグを持っている。



真美「ごめん、これから友達と遊びに行く約束してるんよ」


テル「お?そっかそっか、じゃあこんな所で時間潰してたら迷惑やな」


真美「うん、ごめんな」


テル「じゃあまたな!」



気丈に振舞ってみたが、とにかく別れ話をした後に平気で遊びに行けるという気持ちが全く理解できなかった。


真美ちゃんを見送ったその時、あまりにも信じられない事が起こりすぎたのだろう。
パニック状態を超えて笑いがこみ上げてきたのだ。



テル「ハッハッハ…」



取りあえずこの場から立ち去ろうと思い、当ても無く歩き始めた。
まるで酔っ払いかのように千鳥足でフラフラと歩いているのが分かる。


目の前にあったパイロン(三角コーン)を思い切り蹴る。



テル「ふふふ。めっちゃ飛んだなぁお前。もう一回蹴ったるわぁ」



完全に酔っ払っているような気分だ。
ふと、さっきまで一緒にいたヤスを思い出して電話を掛けてみる。



テル「ヤス〜!さっきなぁ、真美ちゃんと別れたでぇ〜(笑)」


ヤス「はっ!? っていうかお前酔ってる? 取りあえず大丈夫か?」


テル「何がぁ?めっちゃ元気に決まってるやん」


ヤス「あかんわ…。お前今どこにおんねん!!!」


テル「今かぁ?今はなぁ、う〜ん…。真美ちゃんの家の近くやなぁ」


ヤス「お前そっからもう動くな!すぐに迎えに行くから待っとけよ!」


第2章 『没頭』 第46話

 テル「そろそろ真美ちゃんの家に行ってくるわ」


ヤス「おお。まぁ仲良くラブラブしてきてくれや」


テル「言われんでもそうするわ」



ヤスとの時間が楽しかった為、真美ちゃんに対する色々な不安が無くなっていた。
つまり、単純に真美ちゃんと楽しい時間を過ごしに行くんだという思いに変わってしまっていたのだ。


ウキウキしながら原チャを走らせ、10分ほどで真美ちゃんの家に到着した。



テル「もしもし?今家の前に着いたで〜」


真美「じゃあ中に入ってきていいよ」



どことなくよそよそしい雰囲気も感じたが、細かい事は気にせず中に入る。


いつもの真美ちゃんの部屋の匂いだ。
でも部屋の中のレイアウトが少し変わっている事に気が付いた。



テル「そういえば部屋の雰囲気が変わっていい感じやん」



と言いながら、机に目をやるとプリクラがあった。
そこには男女が寄り添いながらピースをしている姿が写っており、女の子は真美ちゃんだった。


テルはこのプリクラを一緒に撮った覚えが無かったため、ふと隣の男の顔を見る。



「真美ちゃんの元彼氏だ!!!」



実は真美ちゃんと付き合って間もない頃、この元彼氏とバイト先で揉めた事があって個人的に最も嫌いな人間なのだ。


コンビニにお弁当などを配達しにくる仕事をしていた元彼氏と事務所でバッタリと会った事があり、真美ちゃんとテルが付き合っている事を知っていたので意味も無くキレてきて口喧嘩をしたことがあるのだ。



「それにしてもこのプリクラって最近撮ったやつやんな…」



明らかに動揺したテルの顔におかしいと思い、真美ちゃんはプリクラが机に置いたままだった事に気が付いて何も無かったかのようにプリクラを引き出しにしまった。


それと同時だった。



真美「テル君ごめんね!」


テル「えっ???」



そこから先の言葉は聞きたくなかった。
まだごめんねという言葉を聞いただけだったが、一瞬にしてテルは悟ったのだ。


 


 


ゴクリ。。。


 


 


真美「別れよ」



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