第1章 『出会い』 第21話

まだ運転経験が浅いとはいえ、運転に自信があったテルは恐怖を抑えて必死に原チャを寝かし、アクセルを開けた。


テルの心「まだいける!」


と思ったその時!


ガシャ〜ン!


津波に襲われたような感覚が体を襲う。
まるでスローモーションだ。

体は原チャから無残に投げ出された。

空が見え、走ってきた道路が見え、また空が見える。


次に見えたのは…。


ガードレールだ!

無意識のうちに体を地面に押し付け、必死に体を止める。


「熱い!」


しかしここで気を抜く訳にはいかない。


「頼む!止まってくれ!」


前方からは対向車が迫ってくる。


「キキ〜!!!」


体がガードレール寸前で止まったと同時に、対向車もギリギリで止まった。


運転手「大丈夫か〜!?」

テル「すいませんでした〜!」

運転手「いやぁビックリしたわぁ。ケガしてへんかぁ?」

テル「大丈夫です!本当にすいませんでした。」

運転手「山を走る時は気をつけや〜。」

テル「はい!以後気を付けます!」



やたらと事情の飲み込みが早い運転手だった。
自身も経験があるのだろうか。

それにしても止まってくれて良かった…。

ガードレールの先は崖。

ガードレールの先に落ちなくても、対向車にはねられていた可能性は
十分にあった。

心臓がバクバクして気が動転し、事の深刻さを理解するまで少し時間が
かかったのは言うまでもない。


テル「痛…。」


普通の服を着ていた状態でもろに地面を滑ったのだ。
当然ケガをしている。

ヒジと骨盤の横が以上に熱い。


テル「うわ!」


表現が難しいが、あえて例えるならまるでハンバーグだ。

今まで色々なスポーツを行ってきたが、ここまで激しい擦り傷は未経験だ。


ヤス「どうした〜?」

テル「!?」



あまりの遅さにヤスがUターンして戻ってきてくれたようだ。


ヤス「あれ?もしかしてこけた?」

テル「見事に。」

ヤス「うわ〜!結構やってますなぁ兄さん…」

テル「おお…。痛いじゃなくて熱いわ。」

ヤス「とりあえずここは道路上やから展望台まで上がるぞ」

テル「原チャ大丈夫かな?」

ヤス「そういえばそうやな。」



原チャは無残にもバックミラーが折れ、ボディーにはかなり傷が付いている。
どうやら転倒した状態で少し放置していたため、ガソリンが少し漏れて
きているようだ。


ヤス「ガソリンが回るまでひたすらキックや!」


原チャにはもちろんクルマと同じ『スタータ(セル)』が付いているが、
キックペダルという物も付いている。
キックペダルを踏み込む事でスタータを回しているのと同等の事になり、
バッテリ残量が無い時などでもエンジンを始動できるものだ。


テル「なんでキックなん?」

ヤス「スタータを回しすぎたらバッテリが上がってまうやん。」

テル「ほうほう。じゃあひたすらキックか!?」

ヤス「気合じゃ!」


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第1章 『出会い』 第22話

原チャにはもちろんクルマと同じ『スタータ(セル)』が付いているが、キックペダルという物も付いている。
キックペダルを踏み込む事でスタータを回しているのと同等の事になり、バッテリ残量が無い時などでもエンジンを始動できるものだ。


テル「なんでキックなん?」

ヤス「スタータを回しすぎたらバッテリが上がってまうやん。」

テル「ほうほう。じゃあひたすらキックか!?」

ヤス「気合じゃ!」



ヤスが言うとおり、ひたすらキックし続けた。
瞬間的にエンジンがかかりそうになるものの、なかなかエンジンが掛からない。


ヤス「あかんな〜」

テル「おお…。そろそろ足が吊りそうやわ(涙)」

ヤス「ちょっとテクニック使ってみるか」



何を思ったのか、ヤスはキーをオフにした状態でキックを始めた。


テル「オフの状態でキックして何の意味があるん?」

ヤス「ガソリンを燃やさずにエンジン内に溜めるねん!」

テル「おおお!なるほど〜!」



そうである。
キーをオンにした状態であれば、どうしてもスパークプラグが点火してしまい、キック程度の少ない燃料供給時には爆発力が弱いのでなかなか始動しない。


ヤス「でもやりすぎはあかんねん」

テル「なんで?」

ヤス「プラグにガソリンが付着しすぎて火花が飛ばなくなんねん」

テル「おお!それは困る!」

ヤス「だからやりすぎ注意。そろそろオンにしてキックするか」



見事にエンジンが始動した。

エンジンを始動するだけでもこんなテクニックがあるとは思っていなかった。


ヤス「じゃあ展望台まで登るぞ〜」

テル「今回はおとなしく走るわ〜」



無事にエンジンも始動し、とりあえず中腹にある展望台まで登り始めた。

第23話へ

第1章 『出会い』 第23話

無事にエンジンも始動し、とりあえず中腹にある展望台まで登り始めた。


5分ほど峠道を上ると、左手に駐車場のようなものが出てきた。
と同時に、ヤスが左のウインカーを出した。
どうやらここが展望台らしい。
自分も続いてウインカーを出して展望台へと入っていった。

駐車場の奥へ進むと、ヤスが原チャを止めて降りた。
もちろん自分もそれに続いた。


ヤス「こっちこっち!」

テル「おう!」

テル「!?」



絶景だ!!!


自分が生まれ育った町が、見事に見下ろすことができる。


テル「うおおおお!」

ヤス「すごいやろ(笑)」



こんな場所が家から10分弱のところにあったとは夢にも思わなかった。
神戸の町はもちろん、大阪、その先の和歌山までくっきりと見える。


テル「これは鳥肌立つなぁ!」

ヤス「おう!俺のお気に入りスポットや!」

テル「夜になったらやばそうやなぁ!」

ヤス「相当やばいで!特に雨上がりは空気が澄んでるから最高や♪」

テル「ほうほう」



とにかくあまりの絶景に胸が躍った。
今後、間違いなく自ら通う事になるだろうと思った。


テル「そういえば走り屋って人らはどこにおるん?」

ヤス「この先の西六甲に多いよ」

テル「じゃあ今日は痛い思いしたから今度やな」

ヤス「まぁ近いからいつでも来れるわ」

テル「そうやな」

ヤス「とりあえず今日は下りるか!」



帰り道もまだあの絶景が頭を離れなかった。
今まで景色で感動したことが無かった事もあるが、それにしても印象が
かなり強く残った。

山を下り、近くのコンビニに立ち寄った。


ヤス「そういえばチャンバーはいつ買うん?」

テル「本間それな〜。いつ買えるかなぁ…」

ヤス「チャンバーくらい付けてなかったら山上るのしんどいで」

テル「確かに馬力の無さは今日痛感した…」

ヤス「ああこれこれ」

テル「ん?」

ヤス「バリバリマシンって言う雑誌でな、いろんな部品が載ってるで」

テル「おお!ひざ擦ってるやん!」

ヤス「投稿写真や。俺も一回くらい載りたいねんよなぁ」

テル「うわ!めっちゃ改造してるなぁ!」

ヤス「走り屋はそんなんやで〜」

テル「うおおすげぇ〜」

ヤス「ちなみに俺の先輩はよく載ってるで。ちょっとした有名人らしい」

テル「へ〜。なんか走り屋ってかっちょええのぉ!」



この雑誌の影響で、今すぐにでもチャンバーが欲しくなった。
しかし最近はあまりバイトに行っていないため、小遣いが足りない…。


テル「あかん!もっとバイト行くわ!」

ヤス「お!火が付いた?」

テル「チャンバーくらい付けたいやん♪」



この日を境に、バイトのシフトを一気に追加したのだった。

第24話へ

第1章 『出会い』 第24話

この日を境に、バイトのシフトを一気に追加したのだった。


そして1ヵ月後。

バイトの給料が入り、ついにチャンバーを購入できる状態になった。


テル「どのチャンバーがいいかなぁ?」

ヤス「う〜ん、俺はデイトナのダッシュチャンバーが好きやなぁ」

テル「確かに速いなぁ。でもどうせやったら最先端いきたいなぁ」

ヤス「そういえば最近『ZERO』ってメーカーが良いらしいで」

テル「どれどれ?」

ヤス「これ」

テル「おお!なんか1直線でかっちょええなぁ!」

ヤス「紫やしこれは目立つで〜!」

テル「おっしゃこれにしよ!」



という事で、性能はわからないので見た目重視でZEROというチャンバーを通販で購入した。

2日後、宅急便でチャンバーが届いた。
組み付け書を読み、なんとかチャンバーを取り付けてみた。


テル「おおおおおお!」


かっこいい。


早速エンジンをかけてみる。


原チャ「ビャイ〜ン」


テル「おおおおおおおおおおおお!」

めちゃかっこいい!

今まで聞いたことが無い種類の音だ。


テル「よっしゃテスト走行行くぞ〜!」

期待度は言うまでもなく高い。

とてつもなく速いに決まっている。

この斬新なデザイン。
心くすぐる音質。

速くないわけが無い。


まさに「ウキウキ♪」状態だ。


期待度120%でアクセルを開けてみると…。

第25話へ

第1章 『出会い』 第25話

期待度120%でアクセルを開けてみると…。


原チャ「ボ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…」

テル「あれ?」


おかしい。

いつもはバイ〜ンと良い加速をしていくのに、全然加速しない…。

ところが、40km/hほどまで加速した所でそれは急に起こった。


原チャ「キュイ〜〜〜ン!!!」

テル「うおっ!?」


一気に加速をはじめたのだ!

首が加速についていかないほどの急加速。
まるで何かのスイッチが入ったかのような急加速である。


テル「うおー!めっちゃ速い〜!」

とっくにスピードメーターは振り切っている。
推定80km/hほどであろうか。
40km/hを超えたところからの加速が尋常ではない!


目前の信号が赤に変わり、とりあえず停車をした。


テルの心「一体何が起こったんだぁ???」

信号が青になり、発進するとやはり全然加速しない…。


テル「う〜〜〜。ストレス溜まるなぁ」

やはり40km/hほどになると、加速スイッチが入った。


テル「きたきた〜!」


どうやら加速スイッチが入るまでは全然駄目である。
しかし加速スイッチが入ってからの加速は半端じゃない。


チャンバーとはこういう物なのか?


とりあえずテスト走行を兼ねてヤスのところへと向かった。

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第1章 『出会い』 第26話

チャンバーとはこういう物なのか?


とりあえずテスト走行を兼ねてヤスのところへと向かった。


ヤス「おおお!ついにきたか!ゼロチャンバー!」

テル「そうそう!ええ音鳴ってるやろ!」

ヤス「どう?速い?」

テル「それがさぁ…」

ヤス「あれ?はずれやった???」

テル「いやいや、40キロからはめちゃくちゃ速いねんけどな…」

ヤス「40キロから?」

テル「40キロまでがめちゃくちゃ遅いねん」

ヤス「あらら…」

テル「一体何が起こってるんかねぇ…」

ヤス「たぶんプーリーのセッティングかなぁ」



またまた聞いたことが無い部品名が出てきた。
プーリーって何のことだろう。


テル「プーリーって何?」

ヤス「円盤みたいな奴でな、中に重りが入ってんねん」

テル「重り?」

ヤス「そうそう。その重りを調整して何かセッティングするらしいねんけどなぁ」

テル「ヤスでもわからんかぁ…」

ヤス「じゃあケンジ君に聞きにいくか?」

テル「ケンジ君?」

ヤス「そうそう。六甲でかなり有名な走り屋やで」

テル「じゃあ六甲に行くんか?」

ヤス「いやいや(笑)その人がバイトしてるバイク屋さん!」

テル「納得」



という事で、かなりの大物が働いているバイク屋さんへと向かった。


原チャ「ボ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…」

ヤス「はっはっは!ほんま遅いなぁ( ̄∇ ̄;)」

テル「笑うな〜!」


第27話へ

第1章 『出会い』 第27話

バイク屋さんは思っていたよりも近く、実家の真下に位置していた。
到着すると、若い人が一人いるのがすぐに確認できた。


ケンジ「おぉヤスやんか」

ヤス「ケンジ君おつかれっす!」

テル「どうもです」


ケンジ「隣は?」

ヤス「小学校からの知り合いですわ」

テル「はじめまして!テルって言います」

ケンジ「おぉ。どうぞよろしく」


ヤス「実は今日はこいつの原チャを見て欲しいんですよ」

ケンジ「どないしたん?」

ヤス「なんか40キロくらいまでがめっちゃ遅いんすよ(笑)」

テル「笑うなっちゅうねん!」

ケンジ「このチャンバー入れてから?」

テル「はい!そうですね」

ケンジ「ちょっと1回乗らせてもらってもいい?」

テル「はい!どうぞ!」



慣れた様子でケンジ君が原チャに乗り込んだ。
しかも変わったフルフェイスのヘルメットだ!


テル「ドラえもん!?」

ヤス「ケンジ君はドラえもんヘルメットやで!めっちゃかわいいやろ(笑)」



原チャ「ボ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…」


ヤス「ププッ ( ̄w ̄)」

テル「ほんまいちいち笑いやがってぇ〜!」



1分ほどしたらすぐにケンジ君は帰ってきた。


ケンジ「ウエイトローラーが重たい典型的なパターンやな」

テル「ウエイトローラー?」

ケンジ「チャンバー入れてから何も駆動系いじってないやろ?」

テル「はい。何のことやらさっぱりです…」

ヤス「やっぱりな〜!俺が言っとった重りの事やで!」

ケンジ「重りって(笑) まぁ間違ってはないけどな」

テル「何やったっけ?プーリーって奴の中に入ってるってやつ!?」

ケンジ「そうそう。ウエイトローラーを軽い奴にしたら問題なしやな」

テル「それって買うんですか?」

ケンジ「とりあえずノーマル状態で6つ入ってるから、それより軽くすんねん」

テル「じゃあまずは南海部品って感じすか?」

ケンジ「そやな。どっちにしてもベストウエイトを探すまで何度も試行錯誤や」

テル「とりあえず適当な重さを買ってくるって感じすか?」

ケンジ「そうやなぁ。ノーマルがたしか1個8gやから、4gを3つかな」

テル「ノーマルと3つだけ交換って事?」

ケンジ「おお!勘がいいねぇ。そんな感じ!」

テル「じゃあとりあえずは4gを3つ買ってきます!」

ヤス「おっしゃいこか!」

ケンジ「捕まんなよ〜」



聞くところによると、ウエイトローラーは6つあり、その合計重量が大事らしい。
つまり今は重すぎて回り始めが遅いのだ。
そのかわり一度回りはじめると重さ分の遠心力による加速をするという事らしい。
逆に軽すぎるとすぐに高速回転になるが、遠心力が弱いので最高速が低いらしい。


うーん。難しい。


重すぎても軽すぎても駄目。


ベストウエイトを見つけるまで何回買う羽目になるんだろう…。
しかもウエイトローラーっていくら位するのか見当が付かない。


小遣い持つかな…。


第28話へ

第1章 『出会い』 第28話

そしていつもの「南海部品」に到着した。


店員「いらっしゃいませ〜!最近よく来るねぇ」

テル「こんちわ〜っす!どっぷり原チャにはまってますから(笑)」

店員「おっ!チャンバー付けたの???」

テル「そうです!ついに買っちゃいまして (〃⌒∇⌒)ゞ」

店員「あれはZEROかな?最近流行ってるみたいやねぇ」

テル「流行ってるんですか?そうとは知らず…」

店員「で、調子はどう?」

テル「何かウエイトローラーって奴がうまく合ってないらしくて駄目っす」

ヤス「だから買いにきてんよな!」

店員「なるほどね。まぁ駆動系をいじるのは基本やからね」

テル「やっぱりそうなんですか?」

店員「特に原チャみたいに馬力が小さいバイクは顕著に表れるからね」

テル「へ〜。大きいバイクはそうでも無いんですか?」

店員「元々パワーがあるから多少セッティングが狂っても十分速いよ(笑)」

テル「そんなもんなんですねぇ…」

店員「バイクは十分すぎるほどのパワーがあるからそうなっちゃうんだよね」

ヤス「テル!早く買って戻るぞ!ケンジくんが待っとる!」

テル「ああそうか。ついつい…」

テル「ウエイトローラーってどれですか?」

店員「右奥にあるよ!」



さてさて、うわさのウエイトローラーってどんな部品なんだろう。


!?


テル「ちっちゃいなぁ!!!」

ヤス「ほんまやなぁ…」

テル「はぁ!? 3個で1000円もするん? ぼったくりやん!」

ヤス「うわ!ほんまたっかいなぁ」

テル「何回も買うなんかできへんわぁ…」

ヤス「でも1回でいきなりビンゴは無いで〜」

テル「やっぱり〜 (/_<。)」

ヤス「運を天にまかせるべし!」

テル「やなぁ」



ウエイトローラーは本当に小さい部品だ。
具体的に言えば、『直径1.5センチ・高さ1.5センチ』の円柱である。

それが3つで1000円。

需要が少ないとはいえ、今思っても本当に高い部品だ。
しかも一番欲している重さがわからずに勘だけで購入するのだ。

まさにユーザー泣かせの部品の一つと言えるだろう。


店員「重さがぴったりやったらいいのにね」

テル「ほんまっすよ〜!何回も買うのは勘弁っす!」

店員「まぁうちはありがたいけど(笑)」

テル「全然ありがたくない!」



店員「ありがとうございました〜!」


テル「はぁ。ほんま頼むで〜」

ヤス「よっしゃ!テルの運を試しにいこか」



まさに神頼み。
高校生にとって、賭けのような1000円投資はきつい。
しかも当たるまで買い続ける必要があるのだ。


ケンジ「おっ!戻ってきたな」

テル「めちゃくちゃ高いっすね〜」

ヤス「こいつかなり焦ってましたよ(爆)」

テル「うるさいなぁ。さすがに1000円とは思わんで普通…」

ケンジ「言うの忘れ取ったけど、ウエイトローラー交換の工賃持ってる?」

テル「えっ!? こうちん???」



第29話へ

第1章 『出会い』 第29話

ケンジ「言うの忘れ取ったけど、ウエイトローラー交換の工賃持ってる?」

テル「えっ!? こうちん???」

ケンジ「工賃じゃわからんか。ようするに作業料やな」

テル「それっていくらくらいするんですか?」

ケンジ「ちょっと待ってよ」



何やら店の中にある資料を手にケンジ君が何かを調べている。


ケンジ「5000円やな」

テル「5000円すか!?」

ケンジ「ウエイトローラーを交換するために結構部品を外すからなぁ」

テル「ちなみに、1回でベストウエイトが出なかったらもう1回5000円?」

ケンジ「そうなっちゃうよな」

テル「それはきっついっすわぁ ( ̄Д ̄;) 」

ヤス「でもとりあえずはやってもらうしかないんちゃう?」

テル「そうやなぁ…」

ケンジ「じゃあとりあえず交換するで」

テル「お願いします」



1回の作業につき5000円…。

かなりの衝撃だった。

今までわからないなりに自分とヤスとで作業していたので気づかなかったが、作業料というのがここまで高いものだとは夢にも思わなかった。


この時私はある事に集中していた。

それはケンジ君の作業である。

なぜなら、次は一人で作業するために手順を覚えてしまおうと思ったのだ。

5000円もあればウエイトローラーを5セット購入できる事になる。
工具を買うお金を差し引いたとしても、最低3セットは購入できるはずだ。


ケンジ「ここのナットを緩めるには専用工具が必要やねん」

テル「専用工具?」

ケンジ「そうそう。だから自分でできへん人が多いねんけどな」



ケンジ君が作業を続ける。


テル「それって高いんですか?」

ケンジ「どれくらいするんかなぁ。南海に売ってるんちゃうか?」

テル「それが無いと絶対にナットを緩めれないんすよね?」

ケンジ「基本的には無理やなぁ」



微妙だ。

普段目にするような工具とは違うようだ。

この工具の値段によっては自分で作業するという道も途絶えるのだが…。


ケンジ「買ってきたウエイトローラー出して」

テル「これです」

ケンジ「これをこうやってセットして…」



作業自体はかなり簡単に見える。
やはり問題は専用工具。


ケンジ「あとは戻すだけや。さぁどんな感じになってるか楽しみやな」


テル「ドキドキだよ!」


と言いたかったが、先輩なので突っ込むのはやめておいた。


ケンジ「おっしゃ!一回その辺走って来いや!」

テル「ういっす!!!」



ふ〜。


5000円がかかっているだけあって緊張するなぁ。



頼むぞ〜!



エンジンを始動し、アクセルをぐいっと開けて走り出す!


テル「うおっ!」


第30話へ

第1章 『出会い』 第30話

頼むぞ〜!



エンジンを始動し、アクセルをぐいっと開けて走り出す!


テル「うおっ!」


原チャ「シュイ〜ン!!!」


テル「おおおおお!」


出足がかなり速い!

あきらかに変わった!


テル「あれ?もう加速終わり?」


現在のスピードメーターの指針は45km。


どうやらウエイトローラーが軽すぎたようである。

Uターンをして店に戻る。


テル「駄目っすね〜」

ケンジ「軽かったか?」

テル「はい。多分。」

テル「はじめは絶好調なんですけど、あとの伸びが無いっす」

ケンジ「じゃあ軽すぎやなぁ」

テル「新たに購入っすか?」

ケンジ「う〜ん。ノーマル3つで試してみる?」

テル「えっと…。今が4gを3つやから8gを3つにするって事ですか?」

ケンジ「そうそう。今よりは最高速が伸びると思うよ」

テル「でも工賃が…」

ケンジ「いいよいいよ。サービスや!」

テル「じゃあ是非お願いします(笑)」



という事で、再度作業がはじまった。

ベストウエイトが出るまで何度も繰り返す。
非常に地道な作業で、好きじゃないととてもできる物ではないと思った。

しかし、これでよい結果が出ると買ってきたウエイトローラーが無意味だ…。

まぁ結果オーライという事でそれは我慢かな…。


ケンジ「よっしゃ走ってこいや!!!」

テル「いってきます!」



次こそは頼むぞ〜。


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