第2章 『没頭』 第21話

ヤス「どのマンションや?」

テル「この小学校の門の前でやられたんや」

マサ「あかん、見ただけで思い出してイライラする!!!」

テル「まぁまぁ。あのマンションや!」

ヤス「おっしゃ、一回原チャのエンジン止めよか」



さすがに深夜というだけあって周囲は静まり返っている。
あまりの静かさに高鳴る鼓動がリアルに聞こえる。


ヤス「こっからは小さい声でしゃべらなあかんで」


本当にヤスは手馴れているのだろう。かなり冷静だ。


ヤス「それから、何があっても絶対に名前で呼び合ったらあかんぞ」

テル「足が付くからか!?」

ヤス「そうや。これだけは厳守や」

マサ「それは気づかんかったわ」

ヤス「俺を誰やと思ってんねん」



本当にあんたは何物だよ?と突っ込みたかったが我慢した(笑)


ヤス「まず、せ〜の!で俺とテルで原チャにブロックを叩き付ける」

テル「どこでもええの?」

ヤス「そりゃ壊れやすい所や。それは自分で考えてくれ」

テル「ほうほう」

ヤス「その後に俺はブレーキケーブルとかを切るからテルは原チャに一回戻る」

マサ「俺は?」

ヤス「テルが戻ってきたらマサがブロックを受け取ってさらに破壊!!!」

テル「じゃあ交代した時に周囲の監視って事か?」

ヤス「当然や。ケーブルを切り終わったらテルを呼ぶから、大丈夫そうなら来る」

テル「で?」

ヤス「みんなでせーの!で原チャを溝に蹴り落とす!」

マサ「で、一斉に逃走か」

ヤス「そういう事やな。とりあえず通行人とかおらんか確認しよか」



人も車も通る気配がない。


気持ちを落ち着かせるため、空をゆっくりと見上げた。


星が綺麗だ。


深呼吸。


目線を戻すと同時に、全員が静かにうなずいた。


リベンジ開始だ!!!

第22話へ

第2章 『没頭』 第22話

目線を戻すと同時に、全員が静かにうなずいた。


リベンジ開始だ!!!


一歩踏み出した瞬間、視界には目標の原チャしか入っていなかった。

まるで原チャに吸い込まれるように、前へ前へと足が進む!

心の中で

「うおおおおお!!!」

と叫びながら走ったのを覚えている。


一足先に、ヤスがブロックで原チャの前部を破壊した。


「ガッシャ〜ン!!!」


そしてテルも続いてブロックを原チャの横っ腹に叩き付けた。


「グァシャッ!!!」


ヤスがブロックを床に捨て、事前の打ち合わせ通りブレーキケーブルの切断に掛かり始めたと同時に、テルにアイコンタクトをして合い図を送った。

このような状況でもいたって冷静である。


テルはブロックをかかえたまま、マサが待つ自分達の原チャの方へと走った。


テル「はいよ!!!」

マサ「おっしゃ!!!」



バトンタッチである。


マサは今までのうっ憤を晴らすかのように、ブロックを叩きつけて破壊しまくっている。
ヤスは相変わらず冷静に色々なケーブル類を切断している。
テルは周囲の異変が無いか見渡している。

とその時だった。



「おい!!!お前ら何さらしてくれとんじゃ!!!!!」


あいつだ。



テルを木刀で攻撃していた方だ!!!

マサを攻撃していた方はどうやら家が違うらしい。


さすがに夜中に何かを破壊している大きな音がマンションに響き、異変に気づいたのであろう。


ヤス「出てくるぞ!!!」


とヤスが声を出したと同時に、テルの方をみて


ヤス「来い!」


と怒鳴った。

そうだ。全員で原チャを溝へ蹴落とすという大事なフィナーレをしなければ!
奴が家から出てくる前にフィナーレを完結させなければいけない!!!


無我夢中で原チャまで走り、全員が原チャを囲みながら見合った。



「せ〜の〜!!!」



腹の底から大声を出し、渾身の力を込めて原チャを蹴り落とした。

第23話へ

第2章 『没頭』 第23話

無我夢中で原チャまで走り、全員が原チャを囲みながら見合った。



「せ〜の〜!!!」



腹の底から大声を出し、渾身の力を込めて原チャを蹴り落とした。

悲しそうな表情をしながら無残にも原チャは溝へ転がり落ちていく。



ヤス「おっしゃ!早く出発すんぞ!!!」

と原チャの方へ全員で走り始めたその時、奴が遠くから走ってくるのが見える。


テル「うおおおおっ!」

マサ「なかなか焦るやんけ〜!」



奴「お前ら何さらしてくれよんじゃああ!逃げんなコラ!!!」


そもそも、このような状況で普通に待つ奴はいない。

ここでも一足先に原チャに辿り着いたのはヤスだった。


ヤス「天誅(てんちゅう)じゃコラ!!!」


と叫んだ時、テルとマサも原チャにたどりついた。

すでに奴が視界に入る所まで近づいて来ている。


テル「乗ったかぁ??? 」

マサ「ええよ出て!」

ヤス「行くぞ!!!」




ε=ε=ε=ε=ε=(o- -)o



奴「お前ら覚えとけよ〜」


遠くの方で奴が叫んでいるのが少し聞こえた。
もちろん覚えておくよと心で答えておいた。

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第2章 『没頭』 第24話

テル「めっちゃうまくいったな!」

マサ「おお!なんかうまくいきすぎて気持ち悪いくらいやわ」

ヤス「いざって時はボコボコにして帰ろうと思っとったのにおもんないわ」


何度も頭の中であの時の風景がよみがえり、興奮がおさまらない。

余談だが、原チャを壊された奴はマサの友人の知り合いだったことが後で発覚。
その件については何の音沙汰も無かったが、心配していた尼崎の暴走族との
つながりも無く、結局このまま忘れ去られる事となった。


テル「そういえばマサは家に帰れるんか?」

マサ「さすがに甲子園まで原チャで行ってもらうのもなぁ…」

テル「じゃあ俺んちに泊まったらええやん」

マサ「せやなぁ。マージャンでもするか」



この頃学校内ではマージャンが大ブームであり、毎日のように誰かの家に
集まってはマージャンを明け方までする傾向があった。
もちろんマサも見事にマージャンをしている。


テル「マージャンかぁ…」

マサ「なんや知らんのか?」

テル「原チャと過ごす日々やから機会が無かったなぁ」

ヤス「俺も知らん」

マサ「せめてルールくらいは知っとかなあかんで〜」

テル「そんなもんかねぇ。家にあるかな?」

マサ「あるやろ〜。お前のおばあちゃんはカリスマやねんから」



そうなのである。

我が祖母はマージャンではカリスマ的な強さで有名で、マージャンに行って
いつも小遣いを稼いできてくれる存在だった。(今でもですが…)
そのカリスマが住んでいる家にマージャンセットくらいあるだろうというのがマサの言い分である。


テル「でもマージャンって4人でやるもんやろ?」

マサ「そんなんは何とでもなるんやって」

テル「へ〜。でももう夜中やで」

マサ「誰も起きてへんわな…」

テル「じゃあ今日はルールだけ教えてもらうか」



とそこで、ヤスが急に思い出したかのように切り出した。


ヤス「そういえば、今週末に追悼あるらしいからテルも来るか?」

テル「追悼って漫画で聞いた事ある追悼暴走かぁ!?」

第2章 『没頭』 第25話

ヤス「そういえば、今週末に追悼あるらしいからテルも来るか?」

テル「追悼って漫画で聞いた事ある追悼暴走かぁ!?」



追悼暴走とは、何らかの事故や抗争などで亡くなってしまった友を追悼するために命日もしくはそれに近い日に関係者などが広範囲から集まり、暴走をするかなり大きなイベントである。
この日は基本的に他の族との抗争は控え、とにかく大集団で友の事を思い出しながらゆっくりと暴走を続けるのである。

というのは建前かもしれないが…。

テルが追悼暴走という言葉を知っていたのは「特攻の拓(ぶっこみのたく)」という漫画を好んで読んでいたからである。


ヤス「そうそう。マサヤ君の追悼や!」

テル「マサヤ君?」

ヤス「こないだ会ったマサミチおるやろ?」

テル「おお総長!」

ヤス「お前の年下やぞ(笑)あいつの兄貴なんやわ」

テル「マサミチって年下やったん!?しかも兄貴って…」

ヤス「年下やっちゅうねん。しかも今さらって感じやで〜」

テル「いやいや、あの風格は年下って言われても信じられへんし」

ヤス「あいつなんか片足で終わらせたるわ」

テル「そんなんどうでもええねん。でも兄貴って亡くなったって事か?」

ヤス「そうそう、なんかもめ事に巻き込まれて刺されたらしいわ」

テル「なんか住んでる世界が全然違う気がするなぁ」



テルはこの時、全く違う世界だという感じがしていたのだ。
しかし自分の最近の行動は限りなくそれに近づいている事をまだ実感していない。
それもそのはず、スケボーばかりしていた日々から考えれば急激に事が
進んでいるからである。


ヤス「とにかく金曜の夜からマサミチとかと合流するで」

テル「単車はどないするん?」

ヤス「明日にでも須磨の後輩からバブを借りてくるわ」

テル「バブ?」

ヤス「HAWKツーや!」

テル「おお!CB250Tってやつか。確かミツオが乗ってるやつや♪」

ヤス「ミツオって誰や?」

テル「特攻の拓に出てくるミツオ…」

ヤス「なんじゃそれ。まぁとにかく明日は練習がてら走るべ」

テル「おっしゃ!なんかワクワクしてきたなぁ」



今まで漫画でしか見たことが無かった世界が目の前で起きている。
その事がとても新鮮でもあり、もっともっと見てみたいという好奇心がどんどん沸いてきているのをテルは分かっていた。

第2章 『没頭』 第26話

テル「そういえばヤスって単車運転できるん?」

ヤス「クラッチか?それくらい俺だってできるわいや」

テル「おお!なんか男らしい発言出たなぁ」

マサ「俺はできへんよ」

テル「お前は原チャすらまともに運転できへんやんけ(笑)」



マサも色々とヤンチャをしているのだが、原チャの運転だけはどうも
下手である。
一度だけテルの原チャも運転させてみたが、見ていてハラハラするほどの
不安定さを目の当たりにしてから二度と運転させないと心に誓ったのだ。


マサ「いやいや、俺のセンスに合わへんだけやって」

テル「言い訳にしか聞こえへんわ」

ヤス「テルはクラッチまだ運転した事ないんか?」

テル「きっかけが無いからなぁ」

ヤス「じゃあ今度、大樹(ダイキ)のNS1借りて練習するか?」

テル「えっ!?大樹ってあのダイキ?」

ヤス「そうやで。あいつは今でもずっと遊んでるで」



大樹はテルと幼稚園〜小学校と同じで、親同士ももちろん面識がある幼馴染
の関係である。
家も近かったこともあり、小学校の頃はよく一緒に遊んでいた仲だ。
ただし中学から私学へ進学したテルは、小学校を卒業してから一度も会って
いない。


テル「そうかぁ、あの大樹もヤンチャしてるんかぁ」

ヤス「いやいや、あいつはただ原チャに乗ってるだけやで」

テル「いや、あいつが普通に原チャを乗ってるとは思えへんな」

ヤス「まぁ人並みにヤンチャかな」

テル「何やその人並みのヤンチャって(笑)」

マサ「俺くらいって事やろ?」

テル「お前が人並みやったら基準がおかしくなるわ!」

ヤス「じゃあ俺が基準か?」

テル「ヤスが基準やったら世の中壊れるっちゅうねん」



そうこうしているうちにテルの家の近くに着いた。


テル「じゃあこの辺でエンジン切って家に戻るわ」

ヤス「じゃあ明日はHAWK2用意しとくわ♪」

テル「( ̄皿 ̄)うしし♪ めっちゃ楽しみやし!」

マサ「じゃあまたなヤス!」

ヤス「おお。またどっかでな」



そして記念すべき初単車走行の夜がやってくる。

第2章 『没頭』 第27話

今日の夜は単車の後ろに乗るという事もあり、いつもより学校にいる時間が
長く感じた。
とにかく一日中頭の中はまだ見ぬ「HAWK2」がどんな単車なのかで一杯でしつこいほど教室にある時計とにらめっこをしていた。

テルの頭にあるイメージのほとんどは漫画「特攻の拓」に出てくる単車がほとんどであり、まだマサミチが乗っていた単車しか本物の暴走族の単車というものを見たことが無い。

「やっぱ3段シートかなぁ…。ハンドルは上に上がってる?それとも鬼ハン?」

イメージばかりが先行し、肝心のHAWK2のスタイルとはかけ離れた妄想まで繰り広げられていく。


そして待ちに待った夜がやってくる。


ヤス「もしもしテル?」

テル「あいよ〜」

ヤス「とりあえず単車は家の下に停めてあるから来れる?」

テル「おっしゃ。じゃあ今から出るから10分くらいで着くわ」

ヤス「ほな待っとくわ」



電話では落ち着いた素振りをしていたが、内心はウキウキである。

急いで原チャを駆り出し、三宮にあるヤスの家まで急いだ。

三宮はいつもより人通りが多く、なぜかパッツン(パトカー)も多い。

こういう日に限ってなぜ多いのか非常に腹立だしい気持ちになったが、今から悪い事をしようとしているから意識が強く、そう見えるだけだろう。

ヤスの家の下にある薄暗い地下駐車場に入ったら、すぐにそれが分かった。


HAWK2だ!


パールホワイトに塗られたボディに低めの3段シート(通称「チョビ3」)、ヘッドライトは上に持ち上げられている(アップライト)。
ハンドルは上に上がっており、グリップ部は斜め下に下がっているスタイル。
空ぶかしするにはもってこいのスタイルだと見てすぐにわかる。

と単車に見とれていると、駐車場の奥からヤスが歩いてきた。


ヤス「どないよ!?」

テル「おお。めっちゃ族車って感じするなぁ!」

ヤス「せやろ?結構綺麗に乗ってるみたいやからなぁ」

テル「もちろん直管なんやろ?」


直管とはマフラー最後部に取り付けてある「サイレンサー(消音器)」を
付けていない、要は爆音仕様という事だ。
暴走族は基本的に直管だが、素材や厚み、開口部の大きさなどで大きく音が変わる。


ヤス「おお。確かBEETやと思うけどなぁ」

テル「BEET?」

ヤス「元々バブ(HAWK2)は低くて太い音出るからBEETがいいんやろな」

テル「なんか凄そうやな…」

ヤス「個人的には甲高いスネーク管とかが好きなんやけどなぁ」

テル「スネーク管???」



次々と出てくる名前に戸惑うばかりであった。
それもそのはず、基本は漫画で得た知識が頼りなので現実を知らないのだ。


ヤス「たぶん追悼でスネーク管付けてる単車がおるはずやから聞いてみ?」

テル「聞いたら分かるん?」

ヤス「ほんまに蛇みたいやからすぐ分かるわ(笑)」

テル「へぇ〜。そういえばRPM管ってどうなん?やっぱりいいん?」


もちろん漫画の受け売りである。
特攻の拓で頻繁に出てくるマフラーのメーカーなので、一種の憧れのような
ものがテルにはあった。


ヤス「P管かぁ…。俺もまだちゃんと聞いた事ないなぁ」

やはり漫画と現実とではギャップがあるようだ。


ヤス「そういえばまだ車多かったか?」

テル「おおそうや、車も多いしパッツンもなんか多い」

ヤス「あちゃ〜。たまたまやろうけど面倒くさいなぁ」

テル「ちょっと待つ?」

ヤス「あほか。そんなん気合いで行くに決まってるやんけ!」

テル「そう来ると思ったわ(笑)」



ついに単車初走行が始まる。

第2章 『没頭』 第28話

ヤス「そういえばまだ車多かったか?」

テル「おおそうや、車も多いしパッツンもなんか多い」

ヤス「あちゃ〜。たまたまやろうけど面倒くさいなぁ」

テル「ちょっと待つ?」

ヤス「あほか。そんなん気合いで行くに決まってるやんけ!」

テル「そう来ると思ったわ(笑)」



ついに単車初走行が始まる。


ヤス「ほなケツ乗ってや」

なれた手つきでヤスが単車のエンジンをかけた。


ヴォンッ!!!


テル「うわ音でかっ!」

ヤス「直管やから当たり前やんけ。ええからはよ乗れっちゅうねん」



これがバブ(HAWK2)の音か…。
以前総長のマサミチが乗っていた単車とは全く音の種類が違う。
何か低くて図太いこの重低音が、好きな人にはたまらないのだろう。


テル「じゃあ乗るで〜」


平静を装ってはいるが、まともに単車にまたがる事すら未経験なので
うまくケツ(後部座席)に乗り方が分からなかった。


ヤス「おいおいっ、あんまり片方に体重かけんなって」

テル「わりわり。よっこいしょっと」

ヤス「ださいから俺の腰とか掴むなよ」

テル「何かコツとか無いん?」

ヤス「単車を寝かした時とかに急に動いたりせんかったらええよ」

テル「一緒に運転してるみたいに乗ったらいいんやな」

ヤス「そういう事やな。じゃあ行くで」

テル「あいよっ」



ヴォンヴォンッ!!!


激しい音と共に地下駐車場から出て、街中へと繰り出す。

第2章 『没頭』 第29話

ヴォンヴォンッ!!!

激しい音と共に地下駐車場から出て、街中へと繰り出す。


ヤス「そういえばタオル持ってきてるか?」

テル「あっ…。忘れてしもたわ」

ヤス「まだまだやなぁ。じゃあとりあえずコンビニ行くで」



そうだった。

どう考えても違法改造&ノーヘル二人乗りで暴走行為に限りなく近い事を
するのだからタオルで顔を隠す必要がある。


ヤス「さすがに店の前に停めたら面倒な事になるから裏道に停めるわ」

テル「ちょっと隠す感じか」

ヤス「あんまり一目に付く所に停めるのはさすがによろしくないからな」

テル「色々と大変やなぁ」



ヤスの家から1分ほどの所にあるコンビニの裏道に入り、単車を停める。


ヤス「俺は単車の側におるから、タオル買ってこいや」

テル「おっしゃ、1枚でええやんな?」

ヤス「いや、俺の分も買ってきといて」

テル「なんで?」

ヤス「俺も忘れた。玄関にあるわ」

テル「結局忘れてますやん!」

ヤス「そんな事もあるわい」



コンビニで白いタオルを2枚、店員に不思議な顔をされながらも買った。
普通に考えて、高校生がジャージ姿でタオルを2枚買うなんてあまり無い
はずだ。バイトでコンビニの店員をしている自分でもそう思った。


テル「はいよ」

ヤス「じゃあいつでも顔を隠せるように、首にたらしとけよ」

テル「OK」

ヤス「ほな行きましょか」



ヴォンヴォンッ!!!


人通りが多い三宮の街を横目に、道路を流し始めた。
爆音に加えてノーヘル二人乗りなので、通り過ぎる人々がかなり見てくる。

テル「やっぱめっちゃ見てくるなぁ」

ヤス「単車は目立ってええなぁ♪みんなの期待に答えて吹かしまっせ!」


珍しくヤスが興奮しているのが伝わってくる。


ヴォン!ヴォン! ヴォ〜ヴォヴォヴォ〜ヴォヴォ〜ヴォヴォヴォヴォ…

第2章 『没頭』 第30話

ヴォン!ヴォン! ヴォ〜ヴォヴォヴォ〜ヴォヴォ〜ヴォヴォヴォヴォ…


テル「めっちゃ気持ちいいやん!!!」

ヤス「そうやろ〜♪」



街行く人々の中には、こっちを見ながらもっと吹かせ!とノリノリであおってくる人もいてヤスはますます興奮してくる。


ヤス「テル!後ろでじっと乗ってるだけじゃなくて踊れ踊れ!!!」

テル「踊るん?」

ヤス「そうそう。背泳ぎしてるみたいに暴れるねん」

テル「落ちたら怖いやん…」



まだまだ単車の後部座席に慣れていないテルにとっては非常に難しいことだ。
しかし流れとしては踊らざるをえない状況である事は間違いない。


ヴォン!ヴォン! ヴォ〜ヴォヴォヴォ〜ヴォヴォ〜ヴォヴォヴォヴォ…


テル「こんな感じか???」

とにかく訳が分からないが、後ろで背泳ぎしているみたいに暴れてみる。
アクセルミュージックで半クラッチを使うたびに、体が後方に持っていかれそうになり冷や汗がでる。

ヤス「( ̄∇ ̄;)ハッハッハ まぁそんな感じやな」

テル「なんや、せっかく踊ってんのにいまいちって感じやろ?」

ヤス「まぁ今日はそんなんでええよ(爆)また追悼でみんなの踊り見たらええわ」

テル「確かに、一回くらいちゃんと見てからじゃないと分からんわ」



30分ほど経っただろうか、スローペースで三宮の街中をぐるぐると回っていた。
そろそろ違う所へ行こうかという雰囲気が流れてきたその時だった。


パパ〜〜〜ン!!!


耳が痛くなるほどのホーンの音と共に、もの凄い勢いで車が追いかけてくる。


テル「ヤス!何か来たで」

ヤス「はぁ?」



車を見ると…。


黒光りしたベンツだ!!!


ヤス「あかん!狩り(ガリ)や!!!!!」


狩りとは、暴走族を狙って車などで追いかけ回し、運が悪ければ本当に車で単車をはねてくる奴もいる。
もちろん拉致されて大変な目にあったり、転倒による大怪我をする事もある。
とにかく暴走では警察なんかよりも一番怖い存在なのだ、


ヤス「テルしっかり捕まっとけよ!」

テル「おう…」



あっという間に黒ベンツが単車の1メートルほど後ろにピッタリとくっついた。

狩り「こらクソガキ止まらんかいボケが〜!!!」


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