第3章 『暴走』 第8話

JUGEMテーマ:車/バイク

愛車の駐車場へ行き、面倒くさそうな雰囲気を出しながらエンジンをかける。
テル「あれ?なんか音が大きくなってる気がするなぁ…」
この時はまだ、事の重大さにテルは気づいていなかった。

ヘルメットを首にかけ、いつもの道を通り、いつもの走り方で家へと向かう。
しかし長い上り坂でいつもと違う事に気が付く。
「あれ?55kmしか出てへんやん…」
いつもは軽く70km近くは出るポイントであったが、明らかに速度が遅い。
しかしマフラーの音が少し大きい気がする程度で、他に違和感はあまり感じない。
「あんまり気にしたらあかんな。後でヤスに見てもらうか」
何となく調子が悪い事を認識しつつ、深く考えずに愛車を家の前に駐車する。
今日は朝まで起きる事は分かりきっていたので、とにかく早く仮眠を取っておきたい。
家に入ると、いつもは母と会話するでもなく一直線に部屋へ入るのだが、珍しく
母がリビングで疲れた様子で横たわっている。
テル「どないしたん?」
母「最近なんか調子悪いんよ。更年期ってやつかなぁ?」
テル「こうねんき?よう分からんけど…」
母「ようするに年とったって事!」
テル「まぁ嫌でも年はとるわなぁ」
母「はぁ…。取りあえず少しの間休むわ」
テル「はいはい」

そうか。普段意識はしていないが、母もすでに40代後半である。
疲れが溜まって…という事もあるのだろう。
部屋に戻り、すぐに目覚まし時計を夜の9時にセットする。
コタツに全身を突っ込んで寝転びながらTVを見ていると自然に眠気がやってくる。
なんて気持ちいいんだろう…。
そういえば間違いなく寒いだろうから、ジャージの下に色々着こんで行こう。
どれくらいの台数が来るんだろうか?
根本的に暴走族と思われるような単車をほとんど見かけた事がないが、実際に
数十台も集まるなんて事はあるのだろうか?
漫画でよく登場するRPM管を入れた単車は来るだろうか?
そういえばヤスはスネーク管の音が最高って言ってたな。
はぁ。真美ちゃんは今頃何をしてるんだろう。
俺の事なんか頭によぎったりしないんだろうなぁ。
そういえば最近、スケボー全然やってないなぁ。
あかん寝れへん…。
でも寝とかな絶対しんどい。
色々考えるから寝れへんのや。
そうそう、無心になれ。
…。
 
ピピピピ…
 
「もう9時か!?」

第3章 『暴走』 第7話

JUGEMテーマ:車/バイク

テル「今日の夜中は寒そうやなぁ…」
マサ「今でこんなに寒いねんから、夜なんか外に出ようとも思わんわ」
テル「いやほんまに。寒いを通り越して痺れてくるもんな」
マサ「何が楽しいんか俺にはさっぱり分からんわ」
色々な部分の考え方が似ており、またお互いの性格が絶妙にマッチしている二人
ではあったが、バイクの事に関しては全く理解し合えなかった二人だった。

逆にマサはバイクではなく、パーティーを主催したりといった方向で遊んでいた
のだが、テルはそっち方面に全然興味が無かった。
それはそれでお互いがお互いを冷静に評価し合えるため、最も理想的なコンビ
だったように思える。
マサ「ちなみに追悼ってどこ走るん?」
テル「いや、俺も初めて参加するから知らんねん。多分43(ヨンサン)ちゃう?」
マサ「43なぁ。大阪くらいでUターンするんか」
テル「それくらいでUターンするやろなぁ」

目の前を公立中学生の4人連れが通り過ぎていく。
さっきまでは相応に馬鹿げた会話などをして楽しそうにしていたであろう余韻を
残しながら、こちらを気にしながらそそくさと無言で立ち去った。
テル「なんかなぁ…」
マサ「どないしてん?」
テル「いや、俺もあの子らと同じような気持ちになった事あるなぁって思ってな」
マサ「なんじゃそれ?」
テル「自覚はないけど、多分俺らって中学生とかから見たらそれなりの雰囲気やで」
マサ「いやいや、だってお前は完全にヤンキーやもん」
テル「はぁ?よう言うわほんま」
マサ「俺なんかかわいいもんやで」
テル「お前なんか完全に輩(やから)やんけ」
着地点のない話しをしながら、テルは彼らがまだ想像もしていないような世界に
自ら足を踏み入る事になるんだと心で感じていた。

テル「ほなまたな」
マサ「おお、捕まんなよ」
テル「じゃあ捕まってなかったら明日電話するわ(笑)」
マサ「はいよ」
電車に乗り、色々とイメージトレーニングをしながら目的の駅で降りる。
なぜかこの日は、全ての人が「普通の人」に見えた。
自分が凄いという意味ではなく、社会のルールから逸脱した人間としての目で
全てが見えていたのだ。
愛車の駐車場へ行き、面倒くさそうな雰囲気を出しながらエンジンをかける。
テル「あれ?なんか音が大きくなってる気がするなぁ…」
この時はまだ、事の重大さにテルは気づいていなかった。

第3章 『暴走』 第6話

JUGEMテーマ:車/バイク

ついに追悼の日がやってきた。

当日の学校は、とても授業を受けるような精神状態ではなかった。
とにかく楽しみで、間違いなく朝まで起きている必要がある事を確信していたため
「体力温存」の意味も含めてずっと寝ていた。


先生「おい、あからさまに寝とらんとちゃんと聞かんかい」

テル「今日は無理!」

先生「何じゃそれ?ええかんげんにせーよお前」

テル「今日は勘弁!」

先生「あのなぁ…」

テル「zzz」


どう考えても寝にくいはずで、起きたら確実に腕とか足が痺れているにも関わらず、
学校の机はどうしてこんなに気持ちいいんだろう。

夢の中では空想の追悼暴走に参加していた。

大群となった単車が一斉に空ぶかしを行い、さらに対立している族と遭遇して
全員で乱闘が始まり…。


zzz…。


マサ「テル!学校終わったぞ!!!」

テル「んん???」

マサ「本気で寝とるやんけ」

テル「おおマサか。あれ?昼休みか?」

マサ「あほ。普通に学校終わったっちゅうねん」

テル「はあ?まだ昼飯食ってへんし」

マサ「当たり前やんけ。お前ず〜っと寝とったし(笑)」

テル「まじか!?本間に終わったん?」

マサ「ほんなら時計見てみろや」


3時30分!?


テル「あかん、右手が無くなった…」

マサ「あんだけ寝たらおかしくもなるわ」

テル「よっしゃ。右手は無くなったけど体力全開って感じやな」

マサ「あれ?もしかして噂の日は今日か?」

テル「そういう事やな」

マサ「お前捕まんなよ〜」

テル「ヤスが一緒やから何とかなるやろ」

マサ「大丈夫やとは思うけどなぁ」

テル「よっしゃ帰るかぁ」

マサ「本気で寝に来ただけやな(笑)」


帰り道、一般的な通学路から外れた通称タバコロードを通り、ダラダラと坂を下っていく。


テル「今日の夜中は寒そうやなぁ…」


第3章 『暴走』 第5話

JUGEMテーマ:車/バイク


まだ少し体が小刻みに震えていた。
同レベル、いや同年代の人間が相手であればそんな事もないのだろうが、明らかに
世界が違う人間に「的」にされる事に心と体は正直に反応していた。
当たり前のように言うヤスは平気なのだろうか?
根本的にこいつらとは神経が違っているんじゃないかとテルは感じていた。

テル「狩りって何が目的なん?」
ヤス「俺が聞きたいわ!」

ごもっともである。
しかし平然としているヤスが腑に落ちない。

テル「あの人らも昔は走ってたんよなぁ」
ヤス「そらそうやろうなぁ」
ヤス「でも、たまに現役の奴も混ざってんで」
テル「はあ?」
ヤス「面白半分って事やな」
テル「うざっ!!!」
ヤス「立場が変わるとって言ったら変やけど、車を運転しとって遭遇したらなぁ」
テル「気持ちが分かるってか?」
ヤス「なんか追いかけたくなるで(笑)」
テル「そんなもんかのぉ」

今思えば、ヤスという存在が非常に身近だったからこそ自分自身の考え方もどんどん
上書きされ、当たり前の基準が変わったのだろう。
友達の影響は大きいというが、まさにヤスはそうだった。
数ヶ月前までは、自分自身がこのような世界に首を突っ込むなんて夢にも思って
いなかったのだ。
それが今や、週末に控える追悼の事ばかりが頭に浮かんでいる。
いや、「これは絶対に駄目な事だ!」と拒否する事ができる人が大半であろう。
しかし当時のテルにはそれができなかった。とにかくバイクが好きだったのだ。
速く走る楽しみ方はもちろんだが、バイクの醍醐味である「音」という世界にも
非常に興味があったのだ。
あとは漫画の影響があったのも否定できない。
ご存知の方もいるかと思うが、当小説に稀に登場する「特攻の拓」である。
元々は真面目で誠実、いじめられっこの主人公が周囲の友人の影響で知らず知らずの
うちに暴走の世界に溶け込んでいく。
その中で出てくる単車や「音」の描写、改造や部品メーカーなどなど、漫画の世界と
現実世界が見事にマッチしていた事がテルの心をくすぐっていたのだろう。

ヤス「ほな、明日の夜に迎えに来るからタオル用意しとけよ」
テル「はいよっ!」

ついに追悼の日がやってくる。

第3章 『暴走』 第4話

JUGEMテーマ:車/バイク

 
ヤス「あかんっ!!!」

テル「えっ?」


後ろを振り向くと、猛スピードでクラクションを鳴らしながらこっちへ
黒光りした車が近付いてくる…。


ヤス「狩りや!絶対落ちんなよ!!!」

テル「うっそやん、めっちゃヤ○ザ屋さんですやんか〜(涙)」

ヤス「できるだけ後ろ見んなよ!顔バレしたら、後でめんどくさいぞ!!!」

テル「ぬおお。めっちゃ近い…」


狩りの車の先端が、今にも原チャに当たりそうなほどベタベタに近付いている。

これが映画のワンシーンなら、ボンネットに飛び移って中の人間をやっつけるか
車を事故に導いて自分は飛び降りて助かるといったシーンなんだろうなぁと
意味の無い回想をしてみる。


ヤス「とりあえず43(ヨンサン)やから、不幸中の幸いや」

テル「なんでや!全然小道に逃げられへんやんけ」

ヤス「この逃げ方、前もやったやろ!」


といった途端、ヤスがとった行動は歩道の逆走だった。


テル「おお!こないだマサミチとかと走った時に使った奴やな!」

ヤス「国道はこれに限る。」


黒光りの車は急停止し、中にいた数人が車から降りてこっちを見ている。


ヤス「あれに連れて行かれたら、本間にエライコトになるで〜」

テル「おお…。想像したくもないわ」

ヤス「まだ当ててこんかっただけでもマシやな」

テル「当てられたら終わりですやん」

ヤス「まぁ今日は、おとなしく小道で帰ろか」


どうもヤンチャな乗り方をしていると、こういうトラブルが付き物らしい。
つい先日も、ヤスの後輩のバブ(HAWK2)で黒光りのベンツに追いかけられた
ばっかりだ…。

こういう世界の人間と一緒にいないと知りえない事であったが、当てられるのだけは
勘弁してほしいと心から思った瞬間であった。


ヤス「大体、ああいう事をやってくる奴は元々ヤンチャしとった人ばっかやわ」

テル「自分らもやっとったのに狩りをするって事かいな?」

ヤス「追いかけるだけの面白半分もおるし、頭おかしい奴は当ててくるし」

テル「どっちにしても最悪やな」

ヤス「中には本気で狂ってる奴がおるからなぁ。そういう時は死ぬ気で逃げるこっちゃ」

テル「言われんでもそうすると思うわ…」


今までのイメージでは、こういった世界において自分の身に危害が及ぶのは「けんか」と
「事故」だけだと思っていたが、新たに「狩り」という物がある事を改めて痛感した。


ヤス「さぁ、週末の追悼が楽しみやの〜♪」

テル「…。」


楽しみだった追悼が、何となく不安になってきたテルであった。


第3章 『暴走』 第3話

JUGEMテーマ:車/バイク

 
タケシ「それやったら原チャ確定やな。」

テル「なんかむかつく…」

馬鹿にしているような二人の忠告だが、本当に正解だった。


タケシ「そういえばテルの原チャってそこそこいじってんの?」

テル「そうやなぁ、ZRほど早くはないけど」

ヤス「まだまだやわ。俺のZRで出るか?」

テル「それはどっちでもええんやけど」

タケシ「ポリ撒く時に、結構飛ばすタイミングあるから速い方がええで」

テル「70km/hくらいやったらきつい?」

タケシ「ギリギリかもしれんなぁ」

ヤス「じゃあZRで決定〜」


自分の原チャが遅いというレッテルを貼られたような気もしたが、事実は事実
という事でしぶしぶ了解をした。


テル「でも追いかけられたら小道に入って撒くんやろ?」

タケシ「原チャだけやったらそれでええねんけど、単車がメインやからな」

ヤス「何十台もの単車で小道に入ったら、絶対誰かこけるで」

テル「だから全開で撒くって事か?」

タケシ「ケツ持ちが時間稼ぎしてる間に全開で開いて、撒き道に入るねん」

テル「撒き道?」

ヤス「大体、ルートの中で絶対に撒ける道があるんやわ」

タケシ「とりあえず、遅れんように付いていけば大丈夫や」

テル「じゃあZRで(笑)」

ヤス「おっ、本間にそれでええんかぁ!?」

テル「次までにいじって速くするし」

タケシ「まぁ取り敢えずは様子見やな」

ヤス「そうそう。取り敢えずタオルだけ持って集合って事や」

テル「おおお。顔に巻くやつやな」

タケシ「別にタオルじゃなくてもええねんけどな(笑)」


くだらない事を話しているだけで2時間ほど経っただろうか。
この世界の人間と話している間は振られたばかりだという事をすっかり忘れていた。


テル「そういえば俺ってさっき振られたばっかやんなぁ…」

ヤス「なんや、忘れとったんかい」

テル「おお」


三宮へと折り返している最中の会話である。


ヤス「本間に人騒がせなやっちゃなぁ」

テル「あほか。ちょっと忘れとっただけで、かなり凹んでるわ」

ヤス「お前、本間に好きやったもんなぁ」

テル「こんな事になるなんか本気で思ってなかったからなぁ…」

ヤス「大丈夫やって。女なんかなんぼでもおるわ」

テル「そんなん分かってるわ。でもあいつじゃないとあかんねんって」

ヤス「あかんっ!!!」

テル「えっ?」


後ろを振り向くと、猛スピードでクラクションを鳴らしながらこっちへ
黒光りした車が近付いてくる…。


ヤス「狩りや!絶対落ちんなよ!!!」


第3章 『暴走』 第2話

JUGEMテーマ:車/バイク


単車の排ガスの臭いが妙に心地よい。

二人の乗った単車は爆音を撒き散らしながら、ヨンサンへと吸い込まれていった。

ヨンサンの頭上には阪神高速が通っている関係で、音の反響が凄い。
エンジンを吹かすと町中に響き渡っているかのような大音響が響き渡り、これぞ
醍醐味!という快感を得る事ができる。

そのせいもあってか、ヤスが延々と吹かし続けている。
3車線の道路だが車はほとんどおらず、自由を感じる瞬間だった。

ヤス「そういえば住吉に行った事あったっけ?」

テル「何かあるん?」

ヤス「このへんやったら結構大きい族があるわ。たぶん公園におるんちゃうか?」

テル「へ〜。行った事無いなぁ」

ヤス「ほな近いし、ちょっと顔出してみよか」


大きい族。
見かけた事はあっても、その輪の中に入っていくのは想像したことがなかった。

ちょっと前の自分なら恐さを感じていたはずだが、この日のテルには何の感情も
芽生えなかった。

いや、正確には状況は違っても自分と同じような感情を持った仲間がいるんだろう
というちょっとした安堵感のような感覚だったのかもしれない。

ヨンサンから住宅街へ入っていき、細い道を行くと公園があった。
暗くてよく見えないが、遠めに見ても中に単車が5台は止まっている。

こっちの単車の音に気づき、全員が立ち上がってこちらを警戒しているようだ。

エンジンを止め、惰性で公園内へ入っていく。


ヤス「まいど〜」

???「真島か?」

ヤス「おう。久しぶりやのぉタケシ」

タケシ「相変わらずやなぁ。あれ?ケツに乗ってるのって…」

ヤス「わしの連れ、テルや」

テル「あれ〜?」

タケシ「やっぱそうやんなぁ!?」


まさかの再会であった。

テルが実家の近くで子供の頃よく遊んでいた友達、タケシが目の前にいるのだ。
記憶は定かではないが、タケシはいつだったか引っ越して依頼会っていなかった。

タケシ「テルちゃ〜ん、悪い事ばっかやっとったらあかんで〜」

テル「よう言うわ本間、お前こそ何やってんねん(笑)」

タケシ「俺は誠実な人生をまっとうしてるだけやで」

テル「そんなん俺もやっちゅうねん」

今まで思い出すことがなかった友人との思わぬ再会に、昔の思い出が一気に
湧き出してくる。


ヤス「テルは失恋で人生お先真っ暗やねんな」

タケシ「うわっ。もしかして病んでる人!?」

テル「いらんこと言うなっちゅうねん。別に病んでへんわ!」

タケシ「そういえば明日の追悼出るん?」

ヤス「単車で出ようと思ったけど、テルが慣れてないから原チャで出るわ」

テル「そうなん?」

ヤス「だって、あのクラッチ操作やったら無理やって ( ̄m ̄〃)」

タケシ「なんや、まだ下手っぴかいな」

テル「いやいや、こないだ1回乗っただけやで!?」

タケシ「それやったら原チャ確定やな。」

ヤス「やろ?」

テル「なんかむかつく…」

ヤス「ええやん。取り合えずどういう感じか遠めで見る感じで」


馬鹿にしているような二人の忠告だが、本当に正解だった。


第3章 『暴走』 第1話

JUGEMテーマ:車/バイク

 
長田まで単車を取りにいき、三宮に帰ってきた時にはすでに街は夜のネオンで
満たされていた。

こういう時に限って、仲良さそうに腕を組み合って歩くカップルが目に付く。

「ちくしょう…」

妬み。

幸せそうな時間をぶっ潰してやろうという気持ちが沸々とわいてくる。


ヴァンヴァンヴァンヴァヴァヴァ〜バババッヴァヴァ〜バババッヴァ…


「えっ!?」

という表情でカップル達が爆音の発生源を慌てて確認する。

「見たらあかん…」

という雰囲気を出しながら、そそくさと足早に立ち去っていく。


お酒の勢いもあるのだろう。
スーツ姿の兄ちゃん達がニヤニヤしながらこっちを見ている。


ヤス「なんやあいつら」

テル「行こ」


兄ちゃん達の目の前に単車で正面からアクセル全開で向かっていく。
慌てたように道を開けるが、目的は通過ではない。

急ブレーキをかけてタイヤを鳴らしながら目の前で単車を止める。

テル「何や?」

兄ちゃん「いや、何も無いです」

テル「はぁ?」

ヤス「調子のって見とったらあかんぞコラ」

兄ちゃん「すんません…」

テル「何も無いんやったらはよ行けや」


イライラしていた。

心が壊れるとここまで人は変わるのかと自分で不思議だった。


テル「ヤス〜。この辺おもんないからヨンサン(43号線)行こ」


全てが敵に見えた。

明らかに自分の目つきが悪い。
目尻が上がり、狐のような目になっているのが分かる。

何の根拠もないが、全てを壊せる気がしていた。

この姿を真美ちゃんに見られたら、今以上に幻滅されるのは分かっている。
しかしこうなったのは真美のせい、だからよりを戻して元の姿に戻してくれ!
と絶対に叶うはずが無い方法でSOSを出しているのだと自分でも分かる。

テルの世界がたった一日で変わった。

すれ違う車が幻想のように見える。
心ここにあらずという言葉はこういう時に使うのだろう。

単車の排ガスの臭いが妙に心地よい。

二人の乗った単車は爆音を撒き散らしながら、ヨンサンへと吸い込まれていった。


第2章 『没頭』 第52話

JUGEMテーマ:車/バイク


テル「そんなんどうでもええわ。取り合えず単車!」

ヤス「ちょお待って。そういえばあいつのバブを借りてくるか」

テル「おっ♪前にちょっと乗ったHAWK2の事やな!」

ヤス「そうそう。でもあいつ長田やから遠いなぁ…」

テル「そんなん気合いやろ!!!」

ヤス「ほほ〜。言うねぇ」


テルの気持ちとしてはどんな手段を用いてでも単車を手に入れようと思っていたが、
以前にも乗った事があるヤスの後輩の単車を手配する事になった。

後輩としては断りたい気持ちがあっただろうが、こういう世界では先輩の言いつけは
納得していなくても従うような風潮があった。

ヤス「ほな取りに行こか〜」

テル「おっ、さすがやなぁ」

ヤス「当たり前やんけ。無理とか言わさへんし」

テル「何か後輩君に悪い事してもたなぁ…」

ヤス「ええねんええねん、とにかく行くぞ」


早々にカラオケを出た二人は長田まで単車を取りに行く。
外に出た時の肌寒さが瞬時にテルの頭を冷やし、真美ちゃんの事を思い出させようと
容赦なく襲い掛かる。

しかしテルは自分の感情がおかしい事に気が付いた。
思い出しても悲しいと思えなかったのだ。

いや、憎しみの対象として無理に置き換えたのかもしれない。

「こうなったらとことん暴れてやる!」

テルが悪い道に進んでるといった噂を真美ちゃんの耳に届けようとしていたのか、
とにかく良い悪い関係なく自分の存在をアピールする術がそれしか思いつかなかった
だけなのかもしれない。

理由は定かでないが、この日を境にテルは暴走する。


第2章 没頭 完


次号より「新章 暴走」へ突入!


第2章 『没頭』 第51話

 いつもちゃんと聞いた事は無かったが、ピアノの音が異常に胸に響く…。
イントロの間に今まで真美ちゃんと過ごした日々を走馬灯のように思いだす。



「I hear the …」



( ┰_┰)



歌い始めてすぐ、涙で声が出なくなった。



テル「やっぱあかんって…」


ヤス「ええから泣きながら歌わんかい」



「むぅげぇんのぉ〜ごぉのぉうぅじゅ〜うでぇ〜 (/□≦、)」



テル「もうあかん」



リモコンで演奏停止を押す。



…。



ヤス「なんや辛気臭いのぉ!ほんならわしが歌うでぇ」


テル「おぅ」


ヤス「やっぱ男やったら尾崎豊やで!!!」


テル「おぅ」



その後、テルは全く歌うことが出来ずにヤスは延々と歌い続けた。
もちろん自己満足のためではなく、テルを少しでも元気付けようとしていたのだ。


ヤスのそのような姿を見ていて、テルは今の自分が馬鹿らしく思えた。


初めての失恋、しかも突然の事で受け止めるまで時間が掛かった。
しかし事実として受け入れなければ、いつまでもこのままである。


とは言っても、そんなにすぐ立ち直れるようなダメージでは無かったが、まずは嘘を付いてでもヤスを安心させなければいけないと思ったのだ。



テル「ヤス!なんかもう吹っ切れたわ。あ〜、何かあほらしっ!」


ヤス「おお、ほんならもう大丈夫やな」


テル「おお。そういえばどっかに単車ないかのぉ?」


ヤス「単車ぁ?」


テル「こういう時は思いっきり騒ぎたいやん」


ヤス「何や、暴走したいお年頃ですか?」


テル「ぬ〜すんだバイクで走りだし♪ってか (ΦωΦ)」


ヤス「あれは15の夜やんけ。俺らもう17やし」


テル「そんなんどうでもええわ。取り合えず単車!」


ヤス「ちょお待って。そういえばあいつのバブを借りてくるか」


テル「おっ♪前にちょっと乗ったHAWK2の事やな!」


ヤス「そうそう。でもあいつ長田やから遠いなぁ…」


テル「そんなん気合いやろ!!!」


ヤス「ほほ〜。言うねぇ」



calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< June 2017 >>

楽天オススメ商品♪

selected entries

categories

archives

recent comment

  • 第2章 『没頭』 第42話
    モンキー乗り・・・だった
  • 第2章 『没頭』 第42話
    しょう
  • 第2章 『没頭』 第36話
    KY
  • 第2章 『没頭』 第32話
  • 第2章 『没頭』 第9話

recent trackback

recommend

エンジン性能の未来的考察
エンジン性能の未来的考察 (JUGEMレビュー »)
瀬名 智和
アイティメディアでの連載記事で参考資料として使用していた本です。
エンジンの気筒数や配列による違い、出力向上法、レスポンス向上法などなど、エンジンに興味がある人には興味がある事ばかり書かれていて超お勧めです。
内容も比較的理解しやすいように噛み砕いてありますので、3級以上の知識があれば大丈夫です。

recommend

 (JUGEMレビュー »)

車のシャシに関する著書では間違いなく一番です。
実際のアライメントセッティングに応用できる基礎知識が手に入りますので、教科書では全く理解できていなかった部分も驚くほど吸収できます。

recommend

自動車用語中辞典 普及版
自動車用語中辞典 普及版 (JUGEMレビュー »)
自動車用語中辞典編纂委員会, 斎藤 孟
プロも多数愛用している、自動車用語辞典の代名詞的存在。私も18歳の頃からずっと使い続けています。HPやメルマガの参考書籍です。

recommend

大車林―自動車情報事典
大車林―自動車情報事典 (JUGEMレビュー »)

プロをうならせる自動車関係の書籍としては最強です。イラストも非常に多く、これ以上を望む人はすでにカリスマ的存在のメカニックでしょう。

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM