第3章 『暴走』 第23話

ヤス「興味あると思うけど、必要以上に見すぎんなよ」

テル「お、おう…」


グォンウォンウォン…


追悼という事もあってこちらも相当な集団だが、相手も負けじと大集団である事がすぐに分かった。
そしてお互いがすれ違うタイミングで、お互いがあまり見合わずに通り過ぎようとしている感じがみえた。
何か獰猛な動物がお互いをけん制し合っているかのような異様な雰囲気である。
とは言っても気になるので、相手をチラチラ見てみる。


テル「ごっつい台数やな…。向こうも追悼とか?」

ヤス「いや、大阪は規模が全然ちゃうねん。しかも金の掛け方も半端ない」

テル「それでか!なんか三段シート多いし、これぞ暴走族って感じがするなぁ」

ヤス「単車だけちゃうで。なんか分からんけど、本気でぶっ飛んでる奴が多い(笑)」

テル「漫画みたいな?(笑)」

ヤス「何なんやろうな〜。なんせ狂ってるわ。でもお前がコールあおったコウイチ君も相当狂ってるで」

テル「お、おう…。ちなみにケンタ君はどんな人なん?」

ヤス「実はなぁ、俺の兄貴と仲いいんやわ。だから俺の事もよくしてくれてる」

テル「ええっ!?それは初耳や…」

ヤス「直接は見た事ないけど、こんな集団で頭はってる訳やから、どえらい強いみたいやで」

テル「ん〜、見た目でもう絶対勝てへんって思う(笑)」

ヤス「俺は負けへんけどな」

テル「はいはい」

ヤス「やってもないのに負けるか分からんやんけ」

テル「いやいや、やる前からこれはやったらあかん人やって分かるやん(笑)」

ヤス「いや、俺は絶対負けへん」


お互いがゆっくり走っている事もあり、全数とすれ違うのに約1分ほどを要した。


テル「あああ。なんかすごい空気感やったなぁ…」

ヤス「こういう時はなぁ、テンション上がりすぎたあんまり知らんアホが喧嘩吹っ掛けて大乱闘になるねん」

テル「なるほどね…。全体の意思を理解してない、それこそ暴走モードか」

ヤス「相手もそういうの分かってるから、何となく変な空気が流れるわけや」

テル「なんか漫画とかやったら同盟?とか敵対とかあるやん。そんなんはないん?」

ヤス「ある程度はあるみたいやけど、別に地域を制覇しようとしてるわけちゃうし、意外と聞かへんな〜」

テル「そっか、ヤスは自称走り屋やもんな(笑)」

ヤス「そうじゃっ。走り屋に暴走族の事聞くなっ!」


当初のドキドキはすでに無くなり、完全にその場の空気に馴染んでいた。
イメージ通りの事もあったが、そうではない事もたくさんあり、このまま楽しい気分で神戸へ折り返して解散するんだろう。
テルは疑う事もなくそう思っていた。

しかし事態は急変する事になる。


ヤス「そろそろ橋渡って、そっから2号線に上がって折り返す感じや」

テル「ほうほう。2号線ってあんまり音響かへんよなぁ」

ヤス「まぁそれはそうやけど、ギャラリーとかいっぱい出てくるから別の意味でおもろいで〜」

テル「なんかそれ楽しみ!」

ヤス「ちっ。また来たな…」

テル「あ…いつの間に」


存在感を完全に消していたようだ。

3台がピッタリと集団の後ろに付いている。


ヤス「さぁケツ持ち部隊のお仕事しにいきますか〜」

テル「俺が運転か〜」

JUGEMテーマ:車/バイク

第3章 『暴走』 第22話

ヴァンヴァヴァヴヴァヴァヴァヴヴァヴァヴヴァヴァ…。


テル「はやっ!!!」

ヤス「相変わらずあれだけは真似できん…」


グゥオーングゥオンウォンウォン!!!


テル「えっ!?」


マサミチの超速コールの音が一気にかき消されるほどの大轟音と共に、突如後方から紫メタリックの車が集団の中に突っ込んできた。


テル「うわっ、やばいの来たっ!!!」

ヤス「ちゃうちゃう。あれは身内の人や」


あまりの勢いに圧倒されそうになったが、かき消されまいと必死にコールをしているマサミチの真横で車は並走をはじめた。と同時に、真っ黒なスモークが施されている車の後部ガラスがゆっくりと開き、中からいかにも!といった感じの女の子が身を乗り出しはじめた。


「マッサミチ〜♪」


3人ほどの女の子が乗っているように見えたが、何かマサミチと会話をしているようだ。
さらに車内からはフラッシュが見えたので、きっと記念写真?でも撮っているのだろう。

と思ったら、また大轟音を立てながら車は集団の前方の方へ走り去った。


テル「なんじゃあれ?」

ヤス「ま、よくある光景や(笑)」

テル「でもああいうのに乗ってる子って、かわいい子多いのは何でやろか?(笑)」

ヤス「ん〜、女の子は強い男に惹かれるって事なんかな?」

テル「それはそうやろうけど、この集団に限ってはちょっと違うような気がするけど?」

ヤス「ま、かわいかったら何でもええやんけ」

テル「とりあえず、マサミチは有名って事やな」

ヤス「おお、むかつくけどな(笑)」


その後も衰えることなくマサミチのコールは続く。

それに合わせて周りの単車も続々とコールを被せていき、43号線から放たれる音は町中に響き渡っている事が容易に分かった。


テル「ほんますごいなぁ、こういうの見たら単車で来たくなるなぁ」

ヤス「ま、全体の流れとか知ってからや」

テル「あと運転技術(笑)」

ヤス「それは六甲で鍛えるべし」


ちょうど西宮を抜け、尼崎に入った所だった。


ケンタ「お前ら、喧嘩売るなよ!!!」


急に大声で周囲にそう叫び、伝言ゲームのように全体にその意思は伝わった。


テル「どうしたん?」

ヤス「多分、大阪の暴ヤンが対向車線におるからやわ。前の方見てみ?」

テル「う〜わっ!? 一体何台おんねん…。」


中央分離帯を挟んだ対向車線の先に、明らかに大集団だと分かる光の帯が見える。
そしてそこから放たれている轟音も少しずつ近づいてきているのが分かった。


ヤス「今日は追悼やから、変なもめごとは絶対に禁止や」

テル「なんか漫画やったら一悶着ありそうなシチュエーションやな(笑)」

ヤス「この人数で揉めたら、取りあえず死人でるで」

テル「おいおい…」

ヤス「それを分かってるから、ケンタ君は釘刺してるねん」


そうこうしている間に、光の帯が単車の集団である事が明確に分かるほどの距離になっていた。


ヤス「興味あると思うけど、必要以上に見すぎんなよ」

テル「お、おう…」


グォンウォンウォン…

JUGEMテーマ:車/バイク

第3章 『暴走』 第21話

 ヤス「よっしゃあ、めっちゃ興奮してきた〜!!!」

急にヤスが後ろで踊り始めた。


テル「おいおい、そんな暴れたら運転難しいって!」

ヤス「あほか、これが楽しいんやんけ♪」


ヤスだけかと思ったら、周りの単車も含めて後ろに座っているみんなが踊っている。


テル「ほんま祭りみたいやな(笑)」

ヤス「お前も直進ばっかりじゃなくて、道路の幅いっぱいに使って蛇行するんじゃあ」


蛇行運転と言えば、一度ヤスが自分の前でやっているのを見た事があるが、原チャを傾ける毎に折りたたまれているセンタースタンドがアスファルトと接触して火花が出ていたような…。


テル「いやいや、あんな火花出るような運転したらこけてまうって!」

ヤス「あほか、いきなりあんなレベル求めてへんわっ(笑)」

テル「とりあえずクネクネしといたらいいんか?」

ヤス「おお。それに合わせて俺が後ろからもっと倒すようにコントロールするから」

テル「はぁっ!?なんかそれはそれで怖いって(笑)」

ヤス「ええからはよやらんかいっ!」


取りあえず思うがまま、原チャを左右に振りながら蛇行運転を始めると…


ヤス「変に逆らうなよ〜!」

テル「うわっ!?」


言葉通り、ヤスが後ろから原チャがもっと倒れるように体重をかぶせてきた。


ヤス「もっと左右に振るペース上げてみ〜」

テル「もっと!?」


言われるがままであったが、みるみる原チャが倒れる角度が凄い事になってきた。


ヤス「こいつはセンタースタンド取ってるから実感無いと思うけど、付いとったらとっくに火花レベルやで〜」

テル「いや、この角度はまじでやばいわ(笑)」

ヤス「これくらいやらんと面白くないやろ〜!」


マサミチ「おお〜、テルも気合い入っとうやんけ〜♪」

テル「ちゃうちゃう、後ろでヤスが暴れてるだけや(笑)」

ヤス「おうマサミチ!はよ自慢のコールしたらんかいっ」


コールというのはアクセルとクラッチ、シフトチェンジなどを活用して排気音で音楽のような物を奏でる事で、人それぞれの好みや癖、得意なパターンがある。(テルが大好きだった特攻の拓という漫画では、アクセルミュージックと表現されていた)
その中でもマサミチはアクセル開閉の早さが特徴であった。


テル「そういえばマサミチが本気で吹かしてるの聞いた事ないかも」

マサミチ「うわっ、そんなん言われたらやるしか無いやん(笑)」

ヤス「当たり前やんけっ(笑)」

マサミチ「ほなちょっくら行ってきまっさ〜」

テル「たのんますっ!」


ヴァンヴァンヴォ〜ッ!!!


およそ集団のど真ん中と思われる場所まで颯爽とマサミチは移動した。


テル「すげえ、ど真ん中にポジショニング(笑)」

ヤス「あいつはうまいから誰も文句言わへんねん」


ヴァンヴァヴァヴヴァヴァヴァヴヴァヴァヴヴァヴァ…。


テル「はやっ!!!」

ヤス「相変わらずあれだけは真似できん…」


グゥオーングゥオンウォンウォン!!!


テル「えっ!?」

JUGEMテーマ:車/バイク

第3章 『暴走』 第20話

辺りは真っ暗で、僅かな街灯だけで照らされている人気のない公園。
そこで一気に轟音が街中に響き渡る様は、何か巨大な怪獣が目覚めたように感じる。

全身にゾクゾクっと電気が走った。

そしてテルはなぜかニヤニヤが止まらなかった。

ヤス「乗ったか〜?」

テル「あいよっ」

ヤス「ほな第二弾いきましょか〜」

テル「いきましょか〜」


集団に遅れないように急いで公園の出口を通過した時であった。


ヤス「あっ!?」

テル「ん?」

ヤス「ちょっとあれ拾ってくるから原チャ持っといて」

テル「え、何?」

ヤス「ええから原チャ支えといてくれ」

テル「お、おう…」


訳も分からないまま、ヤスは再び公園の中に一人で走っていった。

ヤスの動向を見ながら取りあえず原チャの前に座って待機していると、何か棒のような物を拾った様子が見えた。

再びダッシュで帰ってきたヤスは、そのまま原チャの後ろに座ったのである。


テル「えっ?」

ヤス「ええよ、出て!」

テル「あれ?俺が運転するん?」

ヤス「行けるやろ!これもあるし(笑)」


よく見てみると、それは1mほどの細いパイプであった。


テル「それと俺が運転するのと何が関係あんねん」

ヤス「ま、使う機会が無いに越した事はないけど、とにかく付いてけ」

テル「はいはい」


武者震いと言うか、寒さもあったのだが、普通に原チャを二人乗りしているだけで腕が小刻みに震えていた。

まさかこの状況下で自分が運転する事になろうとは…。


ヤス「あれだけ集団でおったら、取り残されることさえ無ければ余裕や」

テル「そんなもんかねぇ…。で、そのパイプは何なん???」

ヤス「喧嘩で使うんちゃうで。これでパッツンの邪魔するんや」

テル「てっきり喧嘩に使うんかと思ったわ(笑)」

ヤス「これってかなり使えるねんで。喧嘩でも使えるけどな(笑)」


再び国道43号線に出ようとする手前で、ようやく集団に合流することができた。

合流地点は細い路地であったが、そこからゾクゾクと単車が国道に流れ出ていく様は体の底から何か込み上げてくるほどの光景である。


ヤス「よっしゃあ、めっちゃ興奮してきた〜!!!」

急にヤスが後ろで踊り始めた。


テル「おいおい、そんな暴れたら運転難しいって!」

ヤス「あほか、これが楽しいんやんけ♪」


ヤスだけかと思ったら、周りの単車も含めて後ろに座っているみんなが踊っている。


テル「ほんま祭りみたいやな(笑)」

ヤス「お前も直進ばっかりじゃなくて、道路の幅いっぱいに使って蛇行するんじゃあ」

第3章 『暴走』 第19話

JUGEMテーマ:車/バイク

ヤス「取りあえず手押しで外まで出ると思うから、遅れんように原チャまで戻るで」

テル「うわ〜、もっと見たかったのになぁ〜」

ヤス「しゃあないやん、あの単車あのままにして作業終了や」

テル「いやだから、続き見てみたいやん♪」

マサミチ「そんなに単車好きやったら、バイク屋見学したらええやん(笑)」

テル「なるほどぅ!!!」

今考えれば当たり前の話しだが、全く思いつかなかったのだ。
実際に修理で持ち込もうと思うとお金も掛かるので、基本的には縁がない場所だと思っていたが…。
見学なら普通に受け入れてもらえそうだ。

テル「マサミチ!それめっちゃいい!」

マサミチ「いや、普通やって(笑)」

ヤス「どうせやったら六甲で走り屋やってる人がおる店を紹介したるわ」

テル「まじ〜!あかん、めっちゃ楽しみや〜」

ヤス「それより今は暴走を楽しまんかい!」

テル「ですよね〜」

マサミチ「ほな後でな」

テル「捕まんなよ〜」

ヤス「お前に言われたくないわっ」

マサミチ「お前もな(笑)」


テルとヤスが原チャに到着する前、一斉に単車のエンジン音が響き渡った。


ヤス「うおっ、手押しじゃなくてそのままエンジン掛けてるやんっ!」

テル「うわ、これは置いていかれるパターンやん!」

ヤス「ダッシュ!!!」


辺りは真っ暗で、僅かな街灯だけで照らされている人気のない公園。
そこで一気に轟音が街中に響き渡る様は、何か巨大な怪獣が目覚めたように感じる。

全身にゾクゾクっと電気が走った。

そしてテルはなぜかニヤニヤが止まらなかった。

ヤス「乗ったか〜?」

テル「あいよっ」

ヤス「ほな第二弾いきましょか〜」

テル「いきましょか〜」

第3章 『暴走』 第18話

JUGEMテーマ:車/バイク

マサミチ「今詳しい人らが集まってクラッチ分解してるわ」

テル「はい〜???」

ヤス「それなりにバイク触れんかったら単車乗りちゃうで」

テル「この状況で作業するとか…。めっちゃ見てみたい♪」

マサミチ「別に見てきたらええやん(笑)」

テル「ヤス行こっ!!!」

ヤスの返事を待たずして、テルは早々に公園の奥へと小走りで向かった。

この頃にはすでにバイクの乗る事とは別に、整備という事に関する興味が人並み以上に沸いていたのである。
もちろんエンジンの中身などは全く未知の世界であり、さらにクラッチがどのような構造になっているのかも分からない。
その未知の世界に踏み込んでいる人が近くにいるというのだから居ても立ってもいられなかったのである。

クラッチの作業を公園の奥でやっているという話しを聞いたテルは、公園の街灯の下で6人ほどが1台の単車を囲んでいる姿を見つけた。

おそるおそる近づいてみると、何やら声が聞こえてきた。


???「どうせ半クラやりすぎてクラッチ板無くなったんやろ」

???「多分な。もうすぐ見えるわ」

???「おい、ちょっと傾いてるからちゃんとまっすぐに起こしとかんかい」

???「すいません…」


顔は見えないが、体格的にケンタ君らしき人もいるようだ。
余計に近づきにくいが、ここは勇気を出して…


ヤス「おいテル!お前あんまり近づいて邪魔すんなよ」

テル「ビックリした〜 w( ̄▽ ̄;)w」

マサミチ「まぁええやん、単車好きなんはみんな一緒やから」

テル「ん〜。ちょっと離れた所から見とくわ(笑)」


???「よっしゃ外れたで〜」

ケンタ「うわっ、お前これはやりすぎや」

???「ツルツルや(笑)」


すぐ近くで見ていないのでよく分からないが、なにか茶色の円盤のような物が数枚取り外されている。これがクラッチ板?というやつなのだろうか。

マサミチ「あれがクラッチ板って言ってな、滑り止めみたいなやつが付いてるんやわ」

テル「ほうほう」

マサミチ「で、半クラしたらあれが無くなっていくから、無くなったら走れんくなるねん」

テル「へ〜、クラッチってあんな感じか〜」

ヤス「俺も初めてみた!」

テル「えっ、何か意外やなw」

ヤス「俺がいじるのは原チャ専門や!!!」

マサミチ「そんな専門いらんやろ」


ケンタ「お前ら聞け〜!!!この単車、今日はあかんからここに置いてく。で、そろそろ出るから準備しとけよ」


「はいよ〜」


テル「やっぱり直らんのか!?」

マサミチ「新しいクラッチを、部品で暴走に持ってくるやつなんかおらんわ」

テル「あ、そゆことね…(笑)」

ヤス「取りあえず手押しで外まで出ると思うから、遅れんように原チャまで戻るで」

第3章 『暴走』 第17話

JUGEMテーマ:車/バイク

ヤス「ほなエンジン切るで」

テル「あいよっ」


エンジンを切ってからもしばらく、惰性で真っ暗な住宅街を駆け抜けていく。

「シュ〜…」

タイヤが転がる音だけが耳に入ってくる。

近くに大勢の仲間と単車が待機しているはずだが、不気味なほど辺りは静けさに覆われている。


ヤス「降りて押すぞっ」

テル「よっしゃ」


必要以上の足音を立てず、なおかつ素早く。
いつどこで待機車両が待ち伏せているか分からない。
路駐している車があるたび、立ち止まって様子を伺う。


ヤス「あの車なんや?中に人おるなぁ」

テル「ん〜。カップルっぽいけどなぁ」

ヤス「ぽいな…」


いつになくヤスが慎重という事は、やはり警戒する必要性があるのだろう。
異常な程の静けさが、余計に緊張感を誘う。


ヤス「見えた。あそこや」

テル「あの公園か!」

ヤス「油断すんなよ」


後ろの状況も警戒しながら、公園に近づいて行く。
公園外壁に沿って、数台の路駐がいるようだ。


ヤス「公園の中に入ってから入り口塞がれたら全滅やからな」

テル「想像しただけで終わりなんが分かるわ」

ヤス「あれ見えるか?」

テル「ん?」


公園の奥に、数台の単車が止まっているのが見える。


ヤス「誰かおるから大丈夫やな」

テル「そんなもんか?」

ヤス「みんな警戒の仕方は知ってるからな」


公園の入り口に辿り着いた所で、公園奥に潜んでいた数人がこっちに気付いたようだ。


ヤス「多分、向こうからは俺らが誰か分かってないで」

テル「あれ誰や!?って感じか」

ヤス「誰か知ってる人おるはずやから、取りあえず行こか」


あえて公園の真ん中を通らず、端を通って公園の奥に向かう。
その行動を見て関係者だと悟ったのか、奥に潜んでいた数人は警戒を解いたようだ。


ヤス「あ、ケンタ君っぽい人もおるなぁ」

テル「お前よく見えるなぁ(笑)全然見えへんし…」

ヤス「視力だけは自信あんねん」


???「誰かと思ったらヤスやんけ」

テル「あっ、マサミチやん♪」

マサミチ「おうおう。お前らおっそいからパクられたか思ったわ」

ヤス「原チャで捕まるわけないやんけ」

マサミチ「結構時間も経ってるし、そろそろ再開って言っとったで」

ヤス「やっぱりケンタくんもおるんか」

マサミチ「もっと奥行ったらみんなおるけど、1台調子悪いんやわ」

テル「調子悪いのに参加するん?」

マサミチ「いや、今詳しい人らが集まってクラッチ分解してるわ」

テル「はい〜???」

ヤス「それなりにバイク触れんかったら単車乗りちゃうで」

テル「この状況で作業するとか…。めっちゃ見てみたい♪」

マサミチ「別に見てきたらええやん(笑)」

テル「ヤス行こっ!!!」

第3章 『暴走』 第16話

JUGEMテーマ:車/バイク

ヤス「どうせいつものとこで撒くはずやから、もうちょっと邪魔しとこか」

テル「うわぁ、なんかめっちゃ不安になるなぁ…」


ヤスの言った通り、400mほど離れた先で単車軍団が同じ所で順番に左折を開始した。

ヤス「こんだけ時間稼げたら、俺らも撒きに入って大丈夫やろ」

テル「ん?ん???」

ヤス「ほな撒くでっ!!!」

テル「うわっ!」


ガリガリガリ…


今まで味わった事がないような急激な倒し込みだった。
サイドスタンドが路面と接触し、火花が出ているのが分かる。


テル「あかんって、これ以上倒したらこける〜!!!」


思わず声に出してしまったが、ヤスは平気な顔だ。

3台中の1台がヤスとテルが乗っている原チャを追跡してきた。
とは言っても、ヤスが急激に左折した場所は住宅街である。


ヤス「わざわざ来んでもええのに(笑)」

テル「あいつら、こんな入り組んだとこで捕まえれるとでも思ってるんかぁ?」

ヤス「でも暴走の時はそこら中に待機車両がおるから油断したらあかんねん」

テル「まぁあんだけ派手にやってたら色々動いてるわなぁ」

ヤス「だから何があっても行き止まりにだけは入ったらあかん」

テル「何でもノウハウがあるんやな(笑)」

ヤス「適当に撒いてから、多分みんなが集合してる公園行くで」

テル「暗黙のルールですか…」


宣言通り、住宅街の角をいくつか曲がっているだけであっという間にパトカーはヤス達を見失った。


ヤス「まだ赤色灯が壁に写ってるのが見えてるから近くにおるな」

テル「あえて遠回りして行ったらいいんちゃうん?」

ヤス「おっ。なんか分かってきたやんけ(笑)」

テル「そらこれだけ色々考え方を見せられたら…なぁ(笑)」


ヤスは目的の公園とは逆方向と思われる方に進路を進め、10分ほど走行してから絶妙な具合に方向転換していた。

テル「そういえばさっきは西向きやったのに、いつの間にか東になってるやん(笑)」

ヤス「誰やと思ってんねん」

テル「お前の頭の中は完全に地図ができてるなぁ…」

ヤス「神戸の下道は全部頭に入ってるっちゅうねん」

テル「それは言いすぎやろ〜」

ヤス「おお、言いすぎや(笑)」

ヤス「そういえばもうすぐしたらエンジン切って近づくからな。もし何かあったらすぐエンジン掛けるから飛び乗れよ。遅かったら置いてくぞ」

テル「置いていかれたらたまらんなぁ…」

ヤス「だから油断すんなってことや。もし集合場所がバレてたら一気にUターンせなやばいからな」

テル「確かに全滅のコース…やな」

ヤス「ほなエンジン切るで」

テル「あいよっ」

第3章 『暴走』 第15話

JUGEMテーマ:車/バイク

P「おい!お前らええかげんにせ〜よコラ!!!」


テル「うわ、なんか急に興奮しはじめたで(笑)」

ヤス「おお、いつもの事や。そろそろ間にぶっこんでくると思うから、後ろ下がってケツ持ち準備しよか」

テル「ようやく原チャ部隊の出番って事やな♪」


警察側がついに本領発揮しそうな雰囲気になったと同時に、他の原チャ部隊も息を合わせたかのように後方へとゆっくりと下がっていく。
どこかで打ち合わせをしていた訳でもないが、それぞれが何をすればよいのかしっかりと認識している事がすぐに分かった。


ヤス「ええか、間を抜けられるとめっちゃ面倒な事になるから遊びながらも死守やで」

テル「後ろに座ってる俺は何かする事あるん?」

ヤス「とりあえず足とか出して邪魔しといたらええわ(笑) でも絶対に落ちんなよ」

テル「りょ〜かいっ」


パトカーが車体を左右に振りながらなんとか間を抜けようと画策しているのが分かる。

隙を見てアクセルを踏んで近づいてきたかと思うと間近の原チャ部隊がすぐに近づいて阻止をし、パトカーは仕方なく急ブレーキを踏むといった感じだ。

傍観者だったのも束の間。あっという間に最後尾まで下がったと思ったら、ヤスに何かのスイッチが入ったかのような運転に切り替わった。


ヤス「絶対に落ちんなよ!」


その言葉の真意がすぐに理解できるほど、パトカーの動きに追従して瞬間的に原チャを倒しこむ角度が尋常ではない。


テル「う〜わ…。こんなん、下手に足出したらほんまに落ちるわ(笑)」

ヤス「だから落ちへん事が最低レベルって事や!」


右折レーンも含めると、交差点付近では一時的に4車線にまで広がる。パトカーからすればケツ持ち部隊を振り切って前に出るチャンスという事になるわけで、ここぞとばかりに左右に揺さぶりながら一気に波状攻撃を仕掛けてくる。


テル「うおお。あいつら、かなりテクってるなぁ」

ヤス「それがあいつらの仕事やからな(笑)」


ヴァンヴァヴァヴォ〜ヴァヴァヴォ〜ヴァヴァ…


ケツ持ち部隊がパトカーを阻止している間も、他の単車軍団は相変わらず爆音を撒き散らし続けている。


テル「あ…。対向車線から覆面が来たで…」

ヤス「ほんまや。今日の感じやったら、3台目はちょっときっついなぁ…」


その時だった。


集団の真ん中あたりにいたケンタ君がおもむろに単車の上に立ち、集団に向かって腕を大きく回した。

それに気付いた人達も順番に腕を回して意思疎通を図ったかと思うと、単車軍団は一気にアクセル全開状態で疾走しはじめた。


テル「あっ…。ヤス!みんな一気に加速しはじめたで!!!」

ヤス「おお分かっとる。一回、パッツンを撒くって事や」

そうこうしている間に、単車軍団との距離がみるみる離れていく。と同時に、3台目の覆面パトカーが合流して戦況は一気に厳しい状態となった。


ヤス「どうせいつものとこで撒くはずやから、もうちょっと邪魔しとこか」

テル「うわぁ、なんかめっちゃ不安になるなぁ…」


ヤスの言った通り、400mほど離れた先で単車軍団が同じ所で順番に左折を開始した。

ヤス「こんだけ時間稼げたら、俺らも撒きに入って大丈夫やろ」

テル「ん?ん???」

ヤス「ほな撒くでっ!!!」

第3章 『暴走』 第14話

JUGEMテーマ:車/バイク

ヤス「ん? ってお前ちょっとまて!!! あの人は…」


ヤスの制止はテルの耳には届かず、すでにテルは右手人差し指を下から上に向かって揺らしながら煽りはじめていた。


ヴァンヴァンヴァンヴァヴァ…


テル「おっしゃ来た〜♪ ┏( ̄▼ ̄)┛」

ヤス「あかん、お前絶対に死んだ…」


??「はっは〜!!!お前ら、楽しんでるかぁ〜♪」

テル「めっちゃ楽しいっす!!!」

ヤス「あ、ありがとうございます…」


ん?


テル「あれ?もしかしてやばい人やった…?」

ヤス「やばいも何もお前…キレたら誰も止められへん鬼のコウイチ君やんけ」

テル「うそ〜?めっちゃ小柄で笑顔も優しそうやん♪」

ヤス「それが怖いんじゃ。なんかちょっと前の暴走で変な奴が車で絡んできた時に笑顔のまま運転手を引きずり降ろして単車で轢きまくって…」

テル「えええ!?」

ヤス「さらにその後、笑顔のままプスプス…とか」

テル「あ…あかん人やな (lll゚Д゚)」

ヤス「ここにおる人らは、見た目に騙されたらあかんで(笑)」

テル「まじか…。笑顔のままプスプスとか…」

ヤス「よっぽどの事がなかったら身内には手は出さへんと思うけど、何がスイッチになるか誰も分からんから」

テル「そこそこの距離感を保っとく(笑)」


その時だった。


「グオオオオオオオン!!!」


テル「狩り!?」

ヤス「いや、あのグロリアはさっきのコウイチくんと仲がいいサトル君や」

テル「え?車も参加するん???」

ヤス「結構多いで〜。しれ〜っとパッツンの邪魔したりするしなぁ」

テル「あ、信号ちゃんと停まってる(笑)」

ヤス「いざって言う時以外はグレーゾーンで参加しとかな単車に比べて逃げにくいからな」

テル「あ、そういう所はちゃんとしてるんや」

ヤス「今だけな(笑)ほら、もう角に赤色隠して待ち伏せしてるやつらおるやろ?」

テル「ほんまや…。早速のご登場ですか」

ヤス「さぁこっからがはじまりや ( ̄ー+ ̄)」


43号線を完全に占領している大軍団は、交差点の影に隠れているパトカーを横目に何事も無かったかのようにゆっくりと通り過ぎる。

車内を見てみると、何やら無線で他の待伏せ班と連絡を取り合っているようにも見える。
さらに後部座席にまで警官が乗っているのだろうか、いつも見かけるパトカーとは様子が違っている。

そして全数がパトカーの横を通り過ぎたと同時に、ゆっくりと赤色燈を回転させながらパトカー(P)が2台背面にピッタリと張り付いた。


P「危ないから止まりなさい」


いつもの拡声器による声掛けだが、じゃあ止まるよ…なんて奴は誰一人としているはずもなく、完全に無視である。


P「おい!お前らええかげんにせ〜よコラ!!!」


テル「うわ、なんか急に興奮しはじめたで(笑)」

ヤス「おお、いつもの事や。そろそろ間にぶっこんでくると思うから、後ろ下がってケツ持ち準備しよか」

テル「ようやく原チャ部隊の出番って事やな♪」


calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< December 2017 >>

楽天オススメ商品♪

selected entries

categories

archives

recent comment

  • 第2章 『没頭』 第42話
    モンキー乗り・・・だった
  • 第2章 『没頭』 第42話
    しょう
  • 第2章 『没頭』 第36話
    KY
  • 第2章 『没頭』 第32話
  • 第2章 『没頭』 第9話

recent trackback

recommend

エンジン性能の未来的考察
エンジン性能の未来的考察 (JUGEMレビュー »)
瀬名 智和
アイティメディアでの連載記事で参考資料として使用していた本です。
エンジンの気筒数や配列による違い、出力向上法、レスポンス向上法などなど、エンジンに興味がある人には興味がある事ばかり書かれていて超お勧めです。
内容も比較的理解しやすいように噛み砕いてありますので、3級以上の知識があれば大丈夫です。

recommend

 (JUGEMレビュー »)

車のシャシに関する著書では間違いなく一番です。
実際のアライメントセッティングに応用できる基礎知識が手に入りますので、教科書では全く理解できていなかった部分も驚くほど吸収できます。

recommend

自動車用語中辞典 普及版
自動車用語中辞典 普及版 (JUGEMレビュー »)
自動車用語中辞典編纂委員会, 斎藤 孟
プロも多数愛用している、自動車用語辞典の代名詞的存在。私も18歳の頃からずっと使い続けています。HPやメルマガの参考書籍です。

recommend

大車林―自動車情報事典
大車林―自動車情報事典 (JUGEMレビュー »)

プロをうならせる自動車関係の書籍としては最強です。イラストも非常に多く、これ以上を望む人はすでにカリスマ的存在のメカニックでしょう。

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM