第3章 『暴走』 第26話

左にまがった道は街灯がほとんどない真っ暗な細い道だった。
この先、いつ行き止まりになるかも全く見当がつかない。


ヤス「あっ、あそこに空き地っぽいのがあるやん!」

テル「あの草のとこか?」

ヤス「そや!あいつらがこっち来る前に、この辺で原チャ隠して一気に走って、フェンス登って草の中隠れるぞ!」

テル「そういう感じ!?」

ヤス「もうそれしかない!」


隠すと言ったってそれほど都合よく原チャが隠れるような場所などない。


ヤス「没収覚悟で溝に捨てる!」

テル「まじっ!?」

ヤス「名残惜しんでる場合ちゃうわ!捕まったらどうせ没収じゃ」

テル「と…とりあえずどうすんねん」

ヤス「エンジン切れっ!」


言われるがままにエンジンを切り、唯一の明かりであった原チャのライトが消えた。
辺りは一面真っ暗になり、息を飲むほどの静けさを感じる。


ヤス「とりあえず貸せっ!」


停止した原チャをヤスが押し始め、おもむろに溝へと落とした。


テル「あっ!?キーは抜き忘れてんで!!!」

ヤス「わざとじゃ!家の前に鍵付けて置いてたら盗まれたって言えるやろ」


こんな時までどこまで冷静な対処ができるんだと感心したのも束の間。


ヤス「次は俺らが隠れるぞっ!」

といったと同時に、ヤスがフェンスに飛びついて登り始めた。
テルも無心でフェンスを登り、向こう側の草むらへと降り立った。

ここ最近、誰も足を踏み入れていないんだろうと容易に想像がつくほど雑草が生い茂り、身を隠すにはこれ以上ないほどの環境であった。

ちなみにここからは当分、聞こえるか聞こえないか程度の声で会話している。


ヤス「とりあえず15分待つか…」

テル「なんで15分なん?」

ヤス「それ以上あいつらは探さへんからや」

テル「そんなもんでやめるん?」

ヤス「まだみんな走ってるから、そっちの追跡を放置するわけにはいかんしな」

テル「でもこの辺におるってばれたら徹底的に探すやろ?」

ヤス「時間が経てば経つほどどこまで逃げたか分からんくなるし、パッツンが入れへん所やと車から降りなあかんから、あんまり積極的には来れへん」

テル「じゃあこっから15分が勝負ってことか」

ヤス「祈れ。」


風が吹くと雑草がざわめく音が聞こえる。
最近はとにかく遊び通している事もあり、冷静に夜風を感じる事もなかった。
これだけ緊迫している状況にも関わらず、なぜか心地よく感じてしまう。


テル「来〜へんなぁ」

ヤス「来たら終わりやと思え」


かなり遠くの方で単車の音がかすかに聞こえる。
みんなは自分達がこういう状況に置かれているかもしれないと少しくらいは気にしてくれているのだろうか。
とにかくこの場をやり過ごし、早く再合流したいと感じていた。


ヤス「まじか…」

テル「あっ…」


まだ全体像は見えないが、数百メートル先から赤色灯がくるくると回りながら、ゆっくりとこちらへ進んできた。

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